チップ・ガナッシ・レーシングから第85回ル・マン24時間耐久レースに参戦する予定だったセバスチャン・ブルデーは、LM-GTEプロクラスに課されているBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)がアストンマーチン・バンテージを基準に調整されているとして、不満を示した。
アストンマーチン・レーシングが投入する95号車と97号車、2台のアストンマーチン・バンテージは、6月14~15日に行われた3回の予選セッションすべてでクラストップタイムをマーク。最終的に97号車がライバルの71号車フェラーリ488GTEを僅差で上回りポールポジションを獲得した。
その一方、昨年ル・マンを制したフォード勢最上位は67号車の5番手。97号車とは約2秒のタイム差がついている。
第101回インディアナポリス500で負傷し、今年のル・マン欠場を余儀なくされたブルデーは、新型マシンを抑え、ベースが2008年から大きく変わっていないアストンマーチンがクラスポールを獲得したことに疑問を投げかけた。
「場合によっては、レベルを引き下げるより、引き上げるほうが正しいこともある」とブルデー。
「LMPクラスがLM-GTEより25秒も速い状態は、お互いのドライバー同士にとってより危険なんだ」
「確かにマシンを速くするよりも、遅くするほうが簡単だし費用も少なくて済む。ただ、レースで勝つために予算を割いて、素晴らしい働きをしている側からすれば、マシンパフォーマンスを低いレベルに抑制されるのは、苛立ちしか感じない」
「いつもアストンマーチンをベースに(BoPが)考えられている。なぜ僕たちが彼らにあわせなくちゃいけないんだ? アストンマーチン・バンテージのベースは、8年か10年くらい前と変わっていないにもかかわらずだ」
「主催者たちは、世代が違って本来であれば比較対象にならないマシン間で性能調整を行おうとしていると思う」
■コルベット勢は静観。「最速のマシンを追い求めていない」
LM-GTEプロクラスで行われているBoPについては多くの関係者から、さまざま意見が出ているが、コルベット・レーシングは“大騒ぎ”することに興味はないとの立場を示した。
チームを率いるダグ・フェハンは「BoPのコンセプトは、エンジンの搭載位置や種類、過給器の有無に関わらず、マシンのパフォーマンスをイコールにすることだ」と述べる。
「このアイデアに従えば、どのマシンにもファステストラップや勝利を獲得するチャンスがある。そして、我々には最速のマシンを追い求めるような哲学は存在しない」
「このル・マンで勝利するためには、どんなコンディションでも快適かつ簡単にドライブするマシンが必要なんだ。ドライバーたちが快適に感じてくれれば、彼らにかかるストレスはほとんどなくなる」
「予選でも、我々は1周分の燃料を積んで新品タイヤを投入しての予選アタックはしなかった。レースでそんな状況は決して訪れないからだ」