かつてル・マン24時間をはじめさまざまなスポーツカーレースに挑戦してきたアメリカのパノスと、グリーン4Uテクノロジー社は6月16日、ル・マン24時間が開催されているサルト・サーキットのビレッジで、新たな電気GTカー『GT-EV』を発表した。
これまでもフロントエンジンのプロトタイプカーをはじめ、意欲的なレーシングカーを数多く送り出してきたパノス。この日、ル・マン24時間の会場内で行われた記者発表会で公開された『GT-EV』は、非常に意欲的な外観をもった“GTカー”となった。
一見プロトタイプカーのようではあるが、ボディ上面に出るコクピットは右側の“キャノピー”部分のみ。左側は何もなく、排熱のスリットのみが開く。リヤウイングはなく、巨大なディフューザーが備えられ、抵抗を減らし下面でダウンフォースを稼ぐことが狙いであることが分かる。
内面もまた意欲的だ。透視図を見ると分かるが、中心部にモノコックが備えられ、前後にモーター2基を設置する“オールホイールドライブ”。中央のモノコック右側にオフセットされたコクピットがあり、左側には巨大なバッテリーパックが備えられる。このバッテリーは、EVテクノロジーを進めるグリーン4Uテクノロジーが担い、レースで使用する場合はピットインのたびに交換することになる。
パノスの代表であり、グリーン4Uテクノロジーの会長兼共同創設者を務めるドン・パノスは、この日ル・マンを訪れ、『GT-EV』をアンベイル。「このル・マンでお披露目したことは、ここが最も自動車の歴史において野心的なコンペティターたちが技術を競い合った場所だからだ」と語った。
この『GT-EV』は、ドン・パノスによれば「あくまでこれは“GT”だ。将来のGTカーは電気モーターを使う時代が来る。これはそのコンセプトを示すものだ」という。パノスからは同時に前後ふたり乗りの“市販GTバージョン”のイラストも公開されている。
そして、現段階ではモックアップながら、将来はル・マン24時間の特別枠“ガレージ56”参戦を狙っているという。発表会では性能の目標として、GTカーとして「LM-GTE並みのパフォーマンス」を目指していることが明かされた。パワーとしては400~450kw、最高速は290km/h程度等の性能が予定されているという。
発表会の最後にドン・パノスは「もしカッコ悪いと思ったならブーイングして欲しい。しかし、挑戦的だと思うなら拍手を」と非常に特異な、しかしパノスらしい外観に笑顔をみせた。実際のル・マン参戦が実現するのか、大いに楽しみな一台だ。