アルゼンチンの実力派ツーリングカー選手権『スーパーTC2000』の第5戦が、同国最大の国際サーキットであるテルマス・デ・リオ・オンドで開催され、予選レースを2016年王者のアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)が制覇。そして日曜の“フューチャーレース”をWTCC世界ツーリングカー選手権にも参戦中のエステバン・グエリエリ(シトロエン・C4ラウンジ)が制し、うれしい今季初優勝を飾った。
WTCCの舞台ともなる最新のサーキットで、6月10~11日に開催された第5戦。このサーキットに毎年訪れるツーリングカーの世界選手権に向け腕試しといわんばかりに、地元アルゼンチン・ドライバーがスポット参戦するのが恒例となっている。
そのドライバーたちの中から誕生したのが、WTCC3連覇の偉業を成し遂げ、現在はトヨタ・ガズー・レーシングのワークスドライバーとして、LMP1クラスのトヨタTS050ハイブリッドでル・マン24時間にも挑戦する“ペチート”こと、ホセ-マリア・ロペスだ。
さらに先輩“ペチート”の後に続けとばかりに世界戦に打って出たのが、現在はボルボのWTCCワークスであるポールスター・シアン・レーシングに所属するネストール・ジロラミであり、カンポス・レーシングで参戦を続けるグエリエリだ。
そのグエリエリは、WTCCと並行して今季からスーパーTC2000にワークス参戦を開始したシトロエン・トタル・レーシングに移籍。開幕戦での活躍以降、今季ここまで低迷を続けていたC4ラウンジだが、ここへきてようやくペースを改善する方法を見つけ出した。
「これまでチームはC4ラウンジのあらゆる領域を見直してきた。開幕戦以降、苦しいラウンドが3戦ほど続いたけど、練習走行からマシンのペースが見違えたのを感じられた」とグエリエリ。
WTCCへの道を切り開いた運命のサーキットで、初日から競争力のあるポジションでセッションを進めたグエリエリは、土曜の予選レースで昨季王者のカナピノを追いつめ、2位表彰台を獲得する速さをみせる。
「メインレースとなる明日のフューチャーレースを制するには、(ハードかソフトか)どちらのタイヤコンパウンドを長く使用できるかが鍵だ」
「今日のレースではフロントタイヤをあえていじめ抜いて、双方のタレ方やグリップのピークを見極めた。明日はソフトをより長く投入して勝負したい」
その言葉どおり、タイヤコンパウンドを使い分けるためのピットストップが義務づけられた日曜のレースで、ポールポジションのカナピノがハードを選択したのに対し、グエリエリはソフトタイヤでフロントロウのグリッドへ。
3番手以下、セカンドロウに並んだカナピノのチームメイト、ベルナルド・レイバーとマリアーノ・ウェルナー(プジョー408)も、同じくソフトでの勝負に出た。
スタートではその選択がまさに明暗を分ける結果となり、ポールのカナピノはオープニングラップでC4ラウンジはおろか、チームメイトにも陥落。その後も1ラップあたり3秒のタイム差でソフトが圧倒的優位に立ち、18番手スタートの第3戦勝者、ファビアン・シャナンツォーニ(プジョー408)などは、3周目までに5番手に浮上する猛チャージを見せる。
たまらずピットに向かいソフトに履き替えたカナピノだったが、18周目にはチームからの無線指示が飛び、「ソフト勢が垂れてハードに履き換えた時の逆転を狙う」ため、ペースを抑えてソフトタイヤを温存することを指示。
ギャップを取り戻そうとプッシュを続けていたカナピノは、これでペースマネジメントに切り替え、先頭はその動向を見ながらもフルプッシュで逃げる展開に。グエリエリ、レイバー、シャナンツォーニらはソフトタイヤながら残り3周までピットを引っ張る戦略を敢行し、ハードに履き替えてピットアウトした際にもポジションを維持することに成功。
結果的に、グエリエリ、レイバーがカナピノの前でコースに復帰し、そのままチェッカー。3位にカナピノが入りなんとか表彰台を死守することとなった。
シャナンツォーニはピットでの作業ロスが響き最終的に7位までダウン。代わりに4位に入ったのは、開幕戦勝者のシトロエン・C4ラウンジ、ホセ-マニュエル・ウルセラとなった。
また、このレース後にはシリーズの天王山に位置付けられる10月開催の『ブエノスアイレス200km』に、WTCC王者ホセ-マリア・ロペスの凱旋がアナウンスされ、トヨタ・ガズー・レーシング・アルゼンティーナのトヨタ・カローラをドライブすることが決定。
2013年シリーズ王者で、今季も勝利を挙げているマティアス・ロッシらとタッグを組むこととなった。