F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。
-------------------------
☆1 ロマン・グロージャン
反射神経の鋭さは今のメンバーでトップクラスだろう。何度も修羅場をかいくぐってきた彼、カルロス・サインツJr.との接触もダメージを最小限に。VTR映像を見れば見るほど非常にリスキーなアクシデントだった。1周後ピットへ、そしてスーパーソフトで68周カバー(!)、デグラデーションのデータを超越するロングランで得た1点。
☆2 フェリペ・マッサ
まったく予知予測できない事故。10数秒で終わらされてもパニックにならないマッサ、若いころならサインツにくってかかっただろう。ベテランはもうそんなことはしない。中間チームの“ミドルリーグ”で今季PP3回目(予選7位)、ストロールの模範教師役。
☆2 ダニール・クビアト
いらだつロシア青年に同情する。フォーメーションラップをスタートできなかったあの時点で、11位グリッドに戻るのは無理。狭いコース上で抜けるはずがない。潔くチームが判断しピット・スタートを指示していればペナルティなど無く、レースにうちこめた。(でもスチュワード批判は控えないと心証を悪くする)。
☆2 ニコ・ヒュルケンベルグ
地味で目立たなくても気が付けば4度目入賞8位。ひとりでルノー全得点、6位ウィリアムズに4点差まで迫る。孤軍健闘「マッサ対ヒュルケン」、両エース対決はまだまだ続く。
☆3 ダニエル・リカルド
FP2でパワーユニットのトラブル発生、8周しかできないのは大きなハンデ。2強に対抗するにはセクター3の空力設定がポイント、そこにしぼり予選6位をしっかり確保。フォース・インディア勢とベッテルに追われるレース展開、3位を守るにはDRS検知点(9コーナー先110m)で寄せ付けないことだ。巧みにトラクションを活かし逃げ切った。ローダウンフォース仕様でソフトタイヤを50周以上ケアしたのも光る。
☆3 ランス・ストロール
18歳7か月13日、フェルスタッペンに次ぐ最年少入賞2位記録を母国GPで。前回の視点コラムに書いたようにチームのサポートを受け、結果を出した彼がこれからどう進歩するか。環境に恵まれているだけに2度目入賞がいつか注目したい(今年満員にしたストロール効果を含め☆をプラス)。
☆3 エステバン・オコン
初コースとは思えないくらいFP1から適切なライン、ブレーキングに衝撃をうけた。CS解説で申し上げたように、少しずつ壁際に接近するアプローチにミスはなく、ボトムスピードが目視でも上昇していくのが見てとれた。セルジオ・ペレスが相当意識したのは間違いない(テレメトリーで一目瞭然だから)。レース終盤にチームメイト・バトル勃発、「オコンおこってる」と直感。何度かラインを変えアピールしても突撃は自重する“怒ン”――。65周目、ベッテルとのサイド・バイ・サイドで安全地帯に避けるリアクションで対応。見せ場も演じた。
☆4 マックス・フェルスタッペン
ここはPPが変則の左側、1コーナーへの距離が近いから。レコードラインはやや右側で、グリッド位置によってはラバーグリップ度合いが微妙に異なる。だからスタートから1コーナーにかけて毎年ジャンプ・シーンがある。昨年はベッテル、今年は彼。
ホイールスピン・ゼロで猛加速、そのまま空いたアウト側に振り、ベッテルよりも奥のエッジ・ブレーキング(!)。軽い接触でフェラーリは翼端板を損傷、レッドブルのタイヤは無傷。この当たり方(当て方)はどちらも見切りがいいから可能なプレー、後方メンバーなら赤旗事態になっただろう。が、フェルスタッペン2位からあっけなくリタイア、もっと続きを見たい気にさせるドライバーなどそうはいない。
☆4 セバスチャン・ベッテル
人工島なのでサーキット全域に常に強風が吹きつける。木々は揺れ、埃が舞い、ごみが飛び、小動物や鳥も現れる。初日からスピン多発、そのコンディションでもフェラーリはしなやかな動きを示し、FP3で1-2独占。予選Q1をスーパーソフトで行ったのは自信の表れだろうが、個人的にこれはどうかなあと……。ウルトラでの感触を把握し続けることで、Q3ラストアタックに活路を見いだせたと思うから。2位0.330秒差はあまりに巨大すぎた。気負い過ぎ1コーナーからリズムが乱れた彼、ハミルトンに65回目のPPを許してしまう。序盤から難しいレースに追い込まれても4位リカバーはベッテルらしい粘りだ。
☆4 フェルナンド・アロンソ
インディ500からは明らかに朗らかな笑顔を見せるようになった(作り笑いはF1の時だけ?)。予選12位にも満足げ、その気分よく分かる。露呈した速度差は軽4輪とスーパーカーか、ストレートでとっさに脇によけるマクラーレンは見るに耐えない。リタイア後になんと客席に乱入、ありえないファンサービスはアメリカン・タッチそのものだ。今アロンソが信じられるのはマシンでもPUでもチームでもない、ファンしかない。
☆6 ルイス・ハミルトン
セナとそっくりなPPの決め方だ。相手に0.004秒差まで肉薄されると、自己限界ゾーンをさらに追及、0.330秒差に突き放した。「ラスト5ミニッツ」のセナを彷彿とさせるものがあった(94年サンマリノGP)。勝ち方も完璧な“グランドスラム”、無線OAされなかったが64周目最速ラップはフルパワーモードを志願したからだろう。自己最多6勝に☆☆☆☆☆☆を。