2017年06月15日 10:14 弁護士ドットコム
アマゾンが4月から、一部地域で生鮮食品も扱うようになり、日常生活にますます浸透しようとしている。アマゾンを含む、ネット通販の宅配量の増加によって、運輸業界で労働問題が起きているが、もう1つ気になるのが税金の問題だ。
【関連記事:子連れ夫婦、2人分の料理を注文して「小学生の子ども」とシェア…そんなのアリ?】
現在のスキームに関する情報は乏しいが、2009年には、米シアトルにある、アマゾン・ドット・コムの販売会社が、日本の顧客との取引で得た所得を申告していなかったことが発覚して、問題になった。法人税は米国に納められていた。朝日新聞の過去の報道(2015年9月24日)によると、アマゾンの日本法人は物流を委託されただけで、米国の販売会社が販売を担っているという仕組みになっている。東京国税局との間で協議が続いた結果、課税額は大幅に減額された。
海外でも課税逃れについての問題があり、週刊東洋経済(2016年3月5日号)では、アマゾンの英国子会社の売上高が53億ポンド(約8600億円)であったのに対して、法人税が売上高のわずか0.3%の1190万ポンドだったと指摘されている。
グローバル企業の課税逃れは、アマゾンに限らず問題になっており、対策も進められているが、どう考えればいいのか。柴田篤税理士に聞いた。
「租税法律主義」をご存知ですか。租税の賦課徴収は、法律の根拠に基づかなければならないという大原則があります。権力者が恣意的に租税を賦課徴収してきた歴史があり、納税者側は長い年月を掛けて、この原則を租税法の中に定着させてきました。
アマゾンは、この原則を守り、節税(合法的)をしてきました。その限りで何ら悪いことをしているわけではないのです。それも法人税での節税であり、国家が外国資本を呼び込むために、法人税率をどんどん下げ、財政収入としての基幹税は、所得税・消費税に移行しているという背景もあります。アマゾン節税ビジネスの全貌は明らかでありませんが、低税率国にキャシュを還流させるスキームを使っているようです。
富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がしたたり落ちるという、トリクルダウンという考え方があります。ところが、どうもうまくしたたり落ちていないようなのです。アマゾンはどんどん勢力を伸ばす一方、街の本屋はどんどん潰れる。富める者はますます富み、グローバルに節税をはかる。一般の国民は、グローバルな節税をはかれず、増大する国家財政の財源として増税される。格差がどんどん拡がり「ちょっと今の仕組みおかしいんじゃないの?」というのが、今なんです。
富める者は言うでしょう。「俺たちはいい学校を出た、寝ずにビジネスをして努力した」と。そうでない者は「君たちは運もあったじゃないか、俺たちが縁の下の力持ちになったからだ」と反論します。我々は機能してこなくなったこの仕組みを少し見直さなければならないところまで来ています。今富める者寄りの租税制度を見直し、トリクルダウン効果が働くようにしなければならないのですが、資本主義そのものがそういう格差を生む要素を内在しており、ポスト資本主義等の新システムを探せという議論も生じています。
【取材協力税理士】
柴田 篤 税理士
貿易通商・物流を中心とする国際税務会計事務所。貿易、国際税務会計・国内税務、国際投資国際法務、IT IoTの4部門からなり、システムエンジニアを3名抱える。
事務所名 :TradeTax国際税務会計事務所(東京・大阪・バンコク・欧米提携事務所)
事務所URL:http://www.japan-jil.com/
(弁護士ドットコムニュース)