もしかすると、カナダGPのエンジンブローによって、ホンダのエンジン投入計画に変更が出てくるかもしれない。
ホンダはカナダGPに現在開発中の燃焼効率を向上させた「スペック3」の投入を断念した。モントリオールで今後の開発について尋ねられた長谷川祐介ホンダF1総責任者は、「準備が整えば、すぐにでも投入したい」としながらも、それがバクーになるかについては「約束はできない」と語るにとどまった。
エンジンの開発は時間を要する。カナダGPからアゼルバイジャンGPの2週間で、劇的な変化が起きるとは考えにくい。したがって、スペック3の投入は早くてもその次のオーストリアGP以降、もしかすると夏休み明け以降のベルギーGPになったとしても不思議はない。
ただし、ホンダが次戦アゼルバイジャンGPにカナダGPで使用したエンジンとまったく同じ仕様で臨むのかというと、必ずしもそうではない。それはアロンソのエンジンがブローしてしまい、ホンダはアゼルバイジャンGPに3基目のエンジンを投入しなければならないからだ。
カナダGPのレース後、長谷川総責任者は次のように語っている。
「次のアゼルバイジャンGPに入れるICEは、(カナダGPと)まったく同じスペックになることはないでしょう。必ず、なんらか(新しいものが)入ります。それがステップ3になるのか、ステップ2.5になるかはまだわかりません」
カナダGPで使用したエンジンは、スペインGPとモナコGPで使用した2基目だったが、レギュレーションで許されるFIAによって封印されている範囲以外のエリアをモディファイしたエンジンとなっていた。
モナコGPのエンジンがステップ2だったとしたら、カナダGPのエンジンはステップ2.1だったといっていいだろう。つまり、ホンダがアゼルバイジャンGPに持ち込むエンジンは、スペック2.2から2.9のいずれかになるだろうと考えられる。
技術的な観点以外にも、ホンダがアゼルバイジャンGPに性能を向上させたエンジンを投入するだろうと考えられる理由がある。それは「マクラーレン対策」だ。今回、マクラーレンはホンダがカナダGPにアップグレードを持ち込めなかったことにひどく失望していた。
だが、ホンダが何もしていないわけではない。栃木県さくら市にある研究 所『HRD Sakura』で日夜、開発を続けている。だが、ステップ3として投入できるまでの成果が確認されていない以上、グランプリへの投入はできないだけなのだ。
ただし、マクラーレンとしてはステップ3まではいかなくとも、少しでもアップデートしたエンジンを早く使いたいのである。
もし、カナダGPでホンダがスペック2.5のエンジンを投入していれば、あそこまでザック・ブラウン(エグゼクティブディレクター/マクラーレン・テクノロジー・グループ)は激怒していなかったかもしれない。しかも、今年からトークンフリーになったわけだから、性能が0.1でも上がっていれば、それを投入してほしいとマクラーレン側が願うのは当然だ。
長谷川総責任者も「エリック(・ブーリエ)とも話していて、進歩することが大切だという認識では一致しています」と語っている。
それらを総合すると、ホンダはアゼルバイジャンGPで信頼性とドライバリティを向上させたスペック2.5を投入し、ベルギーGPで燃焼効率を向上させたスペック3を登場させると考えるのが自然な流れだ。