振り込め詐欺による被害を減らすため、京都府警は特殊詐欺に使われた電話番号を使えなくするシステムを6月12日から導入した。詐欺に使われた電話番号を入力すると、その番号に継続的に電話を掛けて、発信できないようにするというものだ。
詐欺防止には役立ちそうだが、番号がわかっているのならば犯人を逮捕できないのか、電話会社が番号を利用停止にすれば済むのではないかといった疑問が湧く。京都府警の担当者に聞いた。
「飛ばしの電話」が使われているため、番号がわかっても犯人を特定できない
詐欺には「飛ばしの電話」が使われているため、たとえ番号がわかっていても犯人を特定することは難しいという。
「まず誰かが他人の名義で携帯電話を契約します。名義を貸すのは犯罪ですが、お金に困って名義を貸してしまう人がいるんです。さらにこの携帯電話を別の人が買い取ります。こうした『飛ばしの電話』を使っているため、番号がわかっても犯人を特定できるわけではありません」
携帯電話会社が番号を利用停止にすれば済むような気もするが、手続きに時間がかかる。少しでも詐欺の被害を減らすためには、「番号がわかった時点ですぐにそれを使えないようにする必要がある」ということだった。
「警察から要請があれば、携帯電話の利用者を確認し、場合によっては利用停止」
大手の携帯電話会社に問い合わせたところ、「利用停止の手続きはすぐにできるわけではない」ということだった。
「警察から要請があり、携帯電話不正利用防止法に抵触する場合には、利用者の確認を行います。確認がとれなかった場合には利用停止措置を講じます。どれくらい時間がかかるかは一概には言えませんが、即日利用停止ということはあまりありません。何日かかかる場合が多いです」
そのため、詐欺に使われた番号をすぐに使えなくするという京都府警の対策はやはり有効なようだ。
このシステムの導入は、兵庫県警と長野県警に続き、京都府警が全国で3番目。府警の試算によると、昨年このシステムを導入していれば、被害総額の17%にあたる約1億2500万円の被害を防ぐことができた可能性があるという。
それにしても、詐欺犯の電話にこちらから嫌がらせをしかけて使用不能にする、というのはかなり変わった構図だ。ネット上には、「威力業務妨害ではないか」という声もあったが、京都府警の担当者は「全くあたらない」と断言。落合洋司弁護士も、「疑問がないわけではない」としながらも、
「詐欺は正当な業務ではありませんから、保護には値しません。もし形の上では威力業務妨害だとしても、防犯のためにやったことであれば正当業務行為として違法性がなくなります」
と話していた。