WEC世界耐久選手権のシーズンハイライトとなる伝統の耐久レース、第85回ル・マン24時間が6月14~18日にサルト・サーキットで行われる。2015~2016年と2年連続で総合優勝を飾っているポルシェLMPチームは2017年、3連覇を目指してライバルとの戦いに挑む。
2台のポルシェ919ハイブリッドを投入して3年連続、通算19回目のル・マン総合優勝を狙うポルシェ。2016年のレースでは、チェッカーまで残り3分でトップを走るライバル、トヨタがメカニカルトラブルによってストップ、リタイアするという劇的な展開の末に勝利を掴んだ。
2017年、ポルシェはマシンを大幅に改良すると同時にドライバーラインアップを変更。ル・マン3連覇に向けた準備を整えている。
2017年型の919ハイブリッドは、スピードの抑制を狙った車両レギュレーションの変更に伴い、マシン各部でさまざまな改良を実施。規定変更で失ったダウンフォースを取り戻すため、空力デバイスを一新したほか、シャシー、エンジンなどを中心にマシン全体の60~70%が新たに開発されている。
2016年のシーズンオフに変更があったドライバーラインアップでは、アウディから移籍してきたアンドレ・ロッテラーや、昨年表彰台の頂点に立ったニール・ジャニを筆頭に、1号車ポルシェと2号車ポルシェで参戦する6名のドライバーのうち、5名がル・マンでの総合優勝を経験している。
2号車をドライブするブレンドン・ハートレーは、チームで唯一ル・マンでの勝利を手にしていないものの、これまでに通算5回ル・マンに参戦しており経験は豊富だ。
LMP1プロジェクト副代表のフリッツ・エンツィンガーは「2017年のル・マンは非常にハードなレースになるだろう」と予想する。
「(今年のレースは)2016年よりもさらに速くなる可能性がある。(厳しさを感じるのは)トヨタとの対決というだけではない。ル・マンの過酷さは、レースそのものなんだ」
「ル・マンでは次の瞬間に何が起こるかわからず、何の保証もない。事前に十分に準備をし、完璧に作業をし、事故のないレースをして、初めて大きなトロフィーを獲得するチャンスを得られるんだ」
また、チーム代表を務めるアンドレアス・ザイドルはル・マンが過酷な理由を次のように説明している。
「ル・マンが世界でもっとも過酷なレースなのは、単に走る距離が長いからではない。イベント全体を通じて自分のペースを崩さず、リソースを管理する必要があるが、これが2週間以上続く」
「この間、限られたスペースにおいて、90人のスタッフが張り詰めた雰囲気のなかで緊密に連携して作業をする。喜ばしいことも大変なことも、すべて一緒に体験するんだ」
「土曜の午後3時には、チームのメンバー全員が、メカニックもドライバーも、チームの誰であれ、肉体的・精神的にレースに向けてフレッシュな状態になければならない。ここで、私たちが学び、実践してきたことをすべて出し切ることが重要となるんだ」
いよいよ目前に迫った本番を前に、ザイドルは「私たちは技術的にできることはすべてやり、戦略的にもル・マンに向けて準備してきた。ポルシェ919ハイブリッド、強力なドライバーの布陣、そしてチーム。いずれも全力を尽くす準備ができているよ」と意気込みを語った。
ポルシェが戦うのはLMP1クラスだけではない。LM-GTEプロクラスには、2017年より91号車、92号車の2台の新型ポルシェ911 RSRをWECに投入している。2017年はポルシェ911伝統のリヤエンジン・リヤドライブ(RR)からミッドシップエンジン・リヤドライブ(MR)レイアウトに変更された新型マシンがル・マンデビューを果たす。
ル・マンで、リチャード・リエツ、フレデリック・マコウィッキの駆る91号車の3人目として加わるパトリック・ピレは「このレースでの優勝は目標のひとつだ。それは僕がフランス人だからというだけでなく、自宅がサーキットから90分ほどの場所にあるからだよ」とコメント。
「新しい911 RSRとサポートしてくれるチームによって、僕たちは優勝を競うために最高のポジションにいると思う」
また、ミハエル・クリステンセン、ディルク・ウェルナーとともに92号車をシェアするケビン・エストルは「ル・マンは世界でもっとも重要なレースで、ポルシェGTチームから出場できることを嬉しく思う。厳しい練習を積んできて、準備は万端だ」と意気込みを語った。
「フランス人にとってここの表彰台に立つことは、イギリス人のテニスプレーヤーにとってのウインブルドンと同じだ。ファンの期待は大きく、彼らのためにも全力を尽くすよ」
ポルシェは、17日15時(日本時間22時)のレーススタート時、919ハイブリッドの車載映像をFacebook(https://www.facebook.com/porsche)でライブ配信。
また、特設ウェブサイト(http://www.porsche.com/specials/en/international/lemans/)ではスタートから24時間にわたってワークスマシンのオンボード映像の生配信を行う予定だ。
2017年のル・マンは、14日(水)にフリー走行、予選1回目が行われ、15日(木)
に行われる予選2回目、3回目でスターティンググリッドが確定。16日(金)は走行がなく、ル・マン旧市街地で恒例のドライバーズパレードが行われる。
そして17日(土)は現地9時から45分間のウォームアップを経て、現地15時に24時間レースの火蓋が切って落とされる。