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インディ500優勝裏話「もうミルクはいいや」と琢磨。2億7000万円の賞金の使い道と今後の目標

2017年06月13日 16:02  AUTOSPORT web

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凱旋報告取材会に飾られたインディ500ウイナーが飲むミルクボトル
日本人初のインディ500制覇を成し遂げた佐藤琢磨が帰国し、13日に都内で凱旋報告取材会が行われた。インディ500制覇の喜びとシリーズタイトル獲得への目標を語った琢磨は、集まった取材陣の質疑を受けた。

 第101回インディ500の序盤、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)の激しいクラッシュによりレースは一時中断となり、コース修復のためドライバーたちはピットレーンでマシンの中に30分ほど待機となる。

 赤旗中断中は「昼寝をしていました」と状況を語る琢磨。短い仮眠をとることで疲労を回復し、脳をスッキリとさせ集中力を高めるパワーナップ睡眠を行ったようだ。

「寝ようと思っていたわけでありません。レースの緊張感はすごいもので、赤旗で中断しクルマが止まると落ち着く瞬間があります。この後、2時間近くの戦いに向けて集中しなければなならい。その戦いに備えると、身体が通常の生きている状態のエネルギーさえも使いたくないと思ってしまう瞬間があるんです」

「眠気がふっと襲ってきて、後ろにはエンジンが温かく、目の前には送風機。シートは自分の身体に合わせたスペシャルシートで、まるでソファーにいる気分で居眠りをしました」

「その時、夢を見ていて内容は覚えていないんですが、夢から覚めたときに何十万人もいる1コーナーの二重のスタンドとコクピットを確認して、"今、インディ500なんだ"と自分でもびっくりしました」

「一瞬のパワーナップがその後の高い集中力を維持させてくれたと思っています」とコメント。


 インディ500制覇で賞金約2億7000万円を手にした琢磨は、賞金に対しての話題を振られると、「(賞金に対してのモチベーションは)ありましたね(笑)」と答える。

「賞金を稼ぐということは、子供たちの夢にも繋がったり、スポーツを通じてやったことが認知されて、その対価として賞金を得るというのは素晴らしいシステムだと思います」

「インディ500はとんでもない金額の賞金が入ります。僕もハングリーになりますし、レースは厳しい世界なので自分も稼がないといけない。でも、賞金のためだけだったら、2012年も2位に入れば1億円近くの賞金が入りましたが、そこには魅力を感じなかったですね」

「今回は勝った結果として大きな賞金を得ることができたのでチームに持ち帰って、契約で全部入るわけではないですがしっかり頂いて、チームのスタッフにも思い出として何かボーナスをあげたいと思います」と笑顔で語った。

 インディ500勝利後には、その影響力を改めて感じたようだ。

 多忙なスケジュールを振り返り、「街で人々が名前を知らなくても声をかけてくれる。メディアツアーだけでなく、デトロイト戦に行く途中のレストランでも、横を通っていく人たちが"コングラチュレーション"と声をかけてくれる」

「各新聞では1面で扱ってくれてその効果は大きいなと思って、お店にも何も言っていなかったのにデザートを頼んだらミルクが出てきて……。もうミルクはいいやって感じでした(笑)」

「北米におけるインディの立ち位置は非常に高いんだなと改めて感じました」と琢磨。


 最後にシリーズチャンピオンへの展望を聞かれた琢磨は、「目標はタイトルを獲ることですが、非常に厳しいと思っています。アンドレッティが得意とするスーパースピードウェイはポコノしか残っていません。僕が得意としている市街地レースも大半が終わっていて、残るはトロントだけです」

「あとはロードコースとショートオーバル。ショートオーバルの勝ち目はないです。ホンダのパッケージはダウンフォースが高くなればなるほど空力の効率が高いパフォーマンスを出していますが、ショートオーバルの設定では苦戦が続いています」

「ショートオーバルではどれだけダメージを少なくするかという計算になります。ロードコースも同様にハイスピードのサーキットでは厳しさが残っていますが、エンジンパワーは勝っていると思うので、アドバンテージを生かして表彰台を獲っていきたい」

「そしてポコノではトップを目指したいです。残り1勝、もしくは2勝して、コンスタントにトップ5でフィニッシュし続ければシリーズチャンピオンも夢ではないと思います」

「現状では、同じホンダのチップ・ガナッシ。ここは相当強いです。もうひとつはチーム・ペンスキー。ペンスキーの4台とスコット・ディクソン。願わくば僕を入れた6人の戦いになるのではないかと思っています。一戦ずつしっかりとポイントを獲得して走っていきたいと思っています」と意気込みを語った。