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Perfumeはどこまでも夢を追い続ける 電気グルーヴ&チャットモンチーと共演した2日間

2017年06月13日 15:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Perfumeが対バン相手を招いて開催する『Perfume FES!!』。2013年に初めて行われて以来、マキシマム ザ ホルモン、9nine、秦基博ら、毎回ジャンルを飛び越えさまざまなアーティストと共演してきたが、4回目となる今回は「前夜祭」の6月2日には電気グルーヴ、3日にはチャットモンチーが出演した。本稿では、その二日間の模様をレポートする。


■6月2日(金):電気グルーヴ×Perfume


 電気グルーヴの石野卓球とピエール瀧は、最近ではおなじみのサポートメンバーagraphこと牛尾憲輔を引き連れてステージに現れた。今年3月にリリースしたアルバム『TROPICAL LOVE』より「人間大統領」からライブをスタートし、その後もノンストップで曲を繰り出していった。「プエルトリコのひとりっ子」ではレコーディングにも参加したトミタ栞がステージに登場、同曲に「いちご娘」をマッシュアップした「いちご娘はひとりっ子」では卓球もDJブースを離れてフロントに登場し、3人でパフォーマンスを見せた。


 幕張メッセという大舞台、電気グルーヴ側の気合いも十分に感じられた。客席の中央にまで伸びた花道、そして照明やレーザー、VJも取り入れられており、その環境を最大限に活かしたステージングだった。電気グルーヴのVJを担当するDEVICEGIRLSは、かつてPerfumeのツアーのVJを手がけた経験もある映像制作ユニットだ。今回の電気グルーヴのVJのなかにも、Perfumeの過去作へのオマージュと見受けられるものが多数あった。


 中盤では、1993年発売のアルバム『VITAMIN』より「新幹線」、電気グルーヴのアンセムとも言える一曲「N.O.」、石野卓球のソロ曲「Love Domination」も披露。そして最後は再び最新アルバムより「UFOholic」で締めた。全12曲、およそ60分、ノンストップミックスにより、絶えることのない快感と笑いを提供し続けた電気グルーヴ。テクノ・ミュージックのトレンドにもリーチしながら、あくまで電気グルーヴ流のポップミュージックに変換し、この日のステージにおいても否応なく聴く者の心も体も解放していった。曲中に発せられる石野卓球の自由気まますぎるコールも、ピエール瀧のコミカルなダンスも、普段のライブとは変わらずとも、電気グルーヴなりのやり方で、しっかりとPerfumeに応戦していたようにも感じられた。


 そしていよいよPerfumeの出番だ。電気グルーヴの作り上げた熱狂によって、フロアの温度も最初から高かったはず。暗闇に包まれたセンターステージに多数の照明が走り、カウントダウンとともにかしゆか、あ~ちゃん、のっちの3人が現れる。オープニングナンバーは最新シングル曲でもある「TOKYO GIRL」。トライバルなビートと音数の少ないAメロ、そしてサビでダンサブルに展開していく流れは、今のPerfumeの新境地とも言える曲。続く楽曲も「I still love U」「FLASH」といったクールなテイストが続き、独特の高揚感と緊張感を生んでいた。


 MCでは、「憧れの、憧れていいのかもわからないくらいの孤高の存在」(のっち)と電気グルーヴへの愛を語ったPerfume。初めて電気グルーヴのライブを観たのが、中田ヤスタカの楽曲の良さを知るために、2004年の『WIRE』(石野卓球オーガナイズのレイヴイベント)に行った時だという。「当時はなんで大人たちが盛り上がってるのかマジでわからなかったの。ステージ上ではおじさんがふざけるのね、セグウェイ乗ったりしとって。『なんじゃこりゃ!』って(笑)」「でも、その良さに気づいてからは今は大ファンになって。対バンが叶ったっていうのがほんと夢のよう!」とあ~ちゃんが語った。


 中盤では「いじわるなハロー」「宝石の雨」といったシングルのカップリング曲も披露。歌詞を可視化する振り付けには女性らしい可憐さを取り入れながらも、3人の一糸乱れぬフォーメーションは見るたびに洗練されている印象だ。さらに、そこからはフロア映えする楽曲で会場をヒートアップさせていく。「GAME」ではライトセイバーを使った振り付けと近未来的な映像演出を使い、「エレクトロ・ワールド」では観客からもコールが沸き起こった。


 「P.T.A.」のコーナーでは、『Perfume FES!!』定番の対バン相手とのコラボがこの日は実現できなかったことをあ~ちゃんが明かしながらも、この日をどれだけ楽しみにしてきたか話す3人。するとのっちが突然「私なんて昨日の夜、電気グルーヴさんが夢に出てきました。瀧さんとキスをする夢!」と告白。そのまま<夢で KISS KISS KISS>と歌うと、観客もそれに続いてシンガロングし、会場には電気グルーヴの「Shangri-La」が流れ始める。それにあわせ、あ~ちゃんはセグウェイに乗ってステージに登場、かしゆかとのっちは妖艶なダンスを踊る。ここのパートのVJでは、電気グルーヴの作品をオマージュしたものが使われており、先ほどの電気グルーヴのVJとあわせ、コラボは果たされずともお互いのリスペクトを十分に感じられる展開だった。


 そのまま終盤では「Party Maker」「Puppy love」を歌唱。その後、あ~ちゃんが、電気グルーヴとのコラボを最後まで考えていたが、彼らはこの後の出演イベントのため会場を出たことを説明、その代わりにPerfumeで急遽もう1曲歌うことを提案した。観客からのリクエストも募るも、最後はのっちの希望で「チョコレイト・ディスコ」に決定。「チョコレイト」「ディスコ」のコール&レスポンスではこの日一番の盛り上がりを見せた。


 かしゆか、あ~ちゃん、のっちの3人は、最後に「私たちはまだまだ諦めないで活動しますので! 電気のファンのみなさん、私たちをまた観に来てください」と挨拶。MCやパフォーマンス、ステージングの端々に電気グルーヴへの愛とリスペクトを溢れさせながら、『Perfume FES!! 2017』の初日は終了した。


■セットリスト
<電気グルーヴ>
1 人間大統領
2 Fallin’ Down
3 プエルトリコのひとりっ子
4 いちご娘はひとりっ子
5 Missing Beatz
6 Shameful
7 新幹線
8 FLASHBACK DISCO
9 Baby’s on Fire
10 N.O.
11 Love Domination
12 UFOholic


<Perfume>
1 TOKYO GIRL
2 I still love U
3 FLASH
4 Magic of Love
5 いじわるなハロー
6 宝石の雨
7 GAME
8 エレクトロ・ワールド
9 Party Maker
10 Puppy love
Encore チョコレイト・ディスコ


■6月3日(土):チャットモンチー×Perfume


 『Perfume FES!! 2017』、2日目の6月3日公演にはゲストとしてチャットモンチーが出演した。この日は2人体制による“メカットモンチー”として登場。「恋の煙」をエレクトロニックにアレンジして披露すると、スチャダラパーとともに制作した“スチャットモンチー”名義の「M4EVER」へ。バンドというイメージが根強く残る2人だが、今回のライブでは同曲中で福岡晃子(Ba/Dr/Cho)がラップを担当するなど、ヒップホップやEDMといった幅広いジャンルを飲み込んで現在の形を作り上げているようだった。


 その後背中合わせで「いたちごっこ」を演奏し、Perfumeの「TOKYO GIRL」をカバー。橋本絵莉子(Vo/Gt)の柔らかくも切実なボーカルとゆったりとしたテンポが相まって、原曲以上に切なげな雰囲気を感じた。力強いドラミングが印象的な「majority blues」、EDM調でクールな「こころとあたま」と、彼女たちの現在地を象徴するような楽曲を披露し、ライブ定番曲「シャングリラ」で締めくくった。


 橋本はMCで「ステージを降りると別人みたいに柔らかい」とPerfumeが見せるギャップに触れたが、この評価はそのまま熱いパフォーマンスと自然体なMCで観客を楽しませるチャットモンチーにも当てはまるように思う。


 続いて、黄色と黒の衣装に身を包んだ渡辺直美が登場。思いがけないサプライズゲストに観客が驚く中、ビヨンセの「Crazy In Love」に合わせたパワフルなダンスで会場を圧倒した。


 そしてカウントダウンとともにPerfumeが登場し、まずは「TOKYO GIRL」で会場を魅了。先ほどのチャットモンチーのカバーとは異なる、クールでセクシーな印象のパフォーマンスで大人の“Perfumeらしさ”を見せた。顔まわりの手の動きが印象的な「Magic of Love」や、その後披露したチャットモンチーからのリクエストだという「Baby cruising Love」でも、キュートな振り付けとともに柔らかな表情を見せるなど、楽曲リリース当初の可愛らしいイメージとは変化し、より女性らしい雰囲気が増していることを感じた。「宝石の雨」では、軽快でリズミカルなトラックと控えめなエフェクトをかけたボーカル、という最新形の彼女たちの姿も見えた。


 恒例の「P.T.A.」のコーナーでは橋本が作詞を、チャットモンチーが作曲を手がけたPerfumeの新曲「はみがきのうた」を披露。後のアンコール時のMCで橋本が「せっかくだからこれまでにない感じにしようと思った」と語っていた通り、童謡のようで親しみやすく可愛らしい、これまでのPerfumeにはあまりなかった曲調だ。楽曲中の観客とのコール&レスポンス、そして歯磨きやマウス(=ネズミ)を思わせる振り付けを練習しながら楽しむと、そのままダンスチューン「FAKE IT」で会場の熱量を一気に上げ、「Miracle Worker」では柔らかく優しい歌声で客席の空気を変えていった。アンコールではチャットモンチー、渡辺直美も再びステージに登場。全員で楽しそうな表情を見せながら、先ほど練習した振り付けとともに「はみがきのうた」を披露し、2日目は幕を閉じた。


 ライブ中、かしゆかは「チャットの『TOKYO GIRL』、オシャレに聴こえる」と嬉しそうな表情を見せ、さらにのっちは今回の対バンについて「夢が叶った」と感慨深げに言い、あ~ちゃんは「うちらの青春の全て」「『告白』、擦り切れるほど聴いた!」と目を輝かせて語っていたのが印象的だった。一方福岡はMCで、初めてPerfumeのステージを見た際「ダンスでもバンドの演奏と同じように盛り上げることができるのか!」と驚いたことを振り返り、「ずっと変わらずキラキラしてる」と評するなど、仲が良いだけではなく互いに尊敬し合っている様子が伺えた。かつて“憧れのバンド”だったチャットモンチーとの共演は、観客のみならずPerfume自身にとっても思い出に残るものとなったようだ。


 『Perfume FES!!』の中心にあるのは、Perfumeの音楽への愛そのものだ。その上で、かしゆか、あ~ちゃん、のっちの3人は、自分たちの表現をストイックにつきつめてきた今のPerfumeというグループに誇りを持っているようにも感じられたし、電気グルーヴもチャットモンチーも、そんなPerfumeに真正面から向き合っていた。テクノユニット、バンド、そしてガールズグループと、形態は違えども、同じ表現者として互いを高め合っていくようなステージが見れた2日間だった。この公演のあと、『Perfume FES!! 2017』は9月6日、7日に名古屋・愛知県体育館、9月13日、14日に大阪・大阪城ホールにてそれぞれ追加開催されることが発表された。詳細は現地点ではまだ発表されていないが、さらに大きな夢に向かってチャレンジしていく3人の姿を、楽しみに見守りたい。(取材・文=リアルサウンド編集部)


■セットリスト
<チャットモンチー>
1 恋の煙
2 隣の女
3 M4EVER
4 いたちごっこ
5 TOKYO GIRL(Perfumeカバー)
6 Majority Blues
7 Magical Fiction
8 こころとあたま~湯気
9 風吹けば恋
10 シャングリラ


<Perfume>
1 TOKYO GIRL
2 I still love U
3 FLASH
4 Magic of Love
5 Baby crusing Love
6 宝石の雨
7 GAME
8 FAKE IT
9 Miracle Worker
10 Puppy love
コラボ はみがきのうた