2017年06月13日 10:23 弁護士ドットコム
「午前3時半ごろに爆音で音楽をきいているおばちゃんがいます」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにそんな相談がありました。
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相談者によると、一軒家に住む問題の女性は、時々昼間にも爆音で音楽を流しているそうですが、夜中に耳にしたのは初めて。以前も近所の住民が苦情を言ったものの、状況は変わらないままだといいます。
女性の家と相談者の部屋まで15メートルほど離れているそうですが、約2時間に渡ってドンドンと音が響いてきたそうです。こういった近隣間での騒音トラブルは、法的な問題にも発展するのでしょうか。騒音問題に詳しい井坂和広弁護士に聞きました。
「まず、法的評価など難しい話の前に、問題となっている『爆音おばちゃん』について分析してみましょう。
『深夜に爆音で音楽を聴く』おばちゃんは、音楽を聴きたくて爆音を鳴らしているはずはありません。では、何が目的か。嫌がらせ、それも特定の人に対する報復、世間に対する腹いせと色々考えられます。精神疾患や精神障害も起因しているかもしれません。こうなると、社会常識や良心、さらには、法律に訴えても限界があります」
ーーでは、今回のようなケースでは、泣き寝入りするほかないのでしょうか
「いえ、そうではありません。その昔テレビなどで話題になった、奈良騒音傷害事件を思い出してみてください。
『騒音おばさん』と名付けられた女性が、ベランダで叫ぶ『異形(いぎょう)』の姿が何度も放映されました。報道によれば、色々な背景があったようですが、いずれにせよ2年半にわたって大音量の音楽を流し、大声で叫び続けたことでこのおばちゃんは、傷害罪で逮捕されて実刑判決が確定しました。
つまり、事件は『逮捕→実刑』という形で解決したと言えます」
ーー今回のケースでも、司法手続きで解決することはできるのでしょうか
「相談の事例は、時々昼間にも流す程度で、夜中は初めてということです。24時間爆音を流し続けた奈良の騒音おばさん事件と比べると、まだ初期段階と言えそうです。しかし、奈良の事件と同じ根っこの問題ですから、法的な問題に発展する可能性は十分あります。
奈良の事件や相談のケースは、いずれも騒音を利用した迷惑行為であり、生活上、営業上、不可避的に生じる一般的な騒音問題ではありません。従って、『差止請求』や『受忍限度論』など法的な対応を考えるのは的外れです。
ーー差止請求、受忍限度については、騒音トラブルでの基本的な解決法かと思っていましたが、今回のようなケースには不向きなのですね
「相談のケースも、奈良の事件と同様に、『警察→検察→裁判所→刑務所』という刑事手続のコースに乗せるのが最善の解決策です。
もし、再び、夜中に爆音が流れてきたら、間髪入れず、110番通報してパトカーを呼びましょう。その場で止めさせてくれるでしょう。それでも、同じことが続いたら、奈良のおばちゃんと同じコースです。その意味では、先例を作ってくれた奈良のおばちゃんの功績は大きいと言えますね」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
井坂 和広(いさか・かずひろ)弁護士
群馬弁護士会所属、早稲田大学政経学部卒。専門分野は、低周波音問題、DV問題、医療問題など。平成17年度群馬弁護士会副会長、前橋家庭裁判所調停委員。
事務所名:弁護士法人井坂法律事務所高崎事務所
事務所URL:http://isakakazuhiro-lawoffice.jp/