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SKY-HI、プロデューサーの才覚発揮 新作『Silly Game』での独自のバランス感覚を紐解く

2017年06月12日 13:43  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2017年5月29日~2017年6月4日のCDシングル週間ランキング(2017年6月12日付)(ORICON STYLE)


 2017年6月12日付の週間CDシングルランキングで異彩を放つのが、9位のSKY-HI『Silly Game』。SKY-HIとは、AAAの日高光啓のソロ名義。2017年5月2日、3日には日本武道館での公演も行っています。


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 そのSKY-HIの「Silly Game」は、ブラスセクションの鳴り響くジャジーな楽曲で驚きました。しかも、ジャズのフィーリングはリズムセクションにもしっかり存在しています。かと思えば、ラップ・パート、そしてエレキ・ギターがうなるパートへと展開していくめまぐるしさ。これだけの密度を誇る「Silly Game」は、実は4分にも満たない楽曲で、心地良い力業です。


 作詞作曲とトラック・プロデュースはSKY-HI。そしてコ・プロデュースは、SKY-HIのライブで活躍するバンド・SUPER FLYERSのTak Tanakaが担当。レコーディングも、ギター、ベース、ドラム、キーボード、トランペット、サックス、トロンボーンという編成によるバンドで行われています。


 BPMの速い「Silly Game」では何を歌っているのだろうか……と歌詞を見ると、ラップでは<一声かけ綺麗に整列 / 外れモノを皆で軽蔑 / 側から見ればどうにもCrazy>というパンチラインが登場しています。時事的な言葉をリリックに織りこみながらSKY-HIがラップするのは、現在の日本の不寛容な空気です。


 ジャズをベースにしたサウンドと硬派な歌詞だというのに、キャッチーな「Silly Game」には大衆性もしっかり担保されています。マニアックさとメッセージ性と大衆性の並立。「Silly Game」で真に感嘆したのは、SKY-HIのバランス感覚でした。


 その「Silly Game」から雰囲気が一転して、完全にヒップホップとなるのが、カップリングの「Walking on Water Remix (feat. Lick-G & RAU DEF)」。2017年のアルバム『OLIVE』収録曲のリミックスで、「Silly Game」とは対照的に、まったく甘味のない楽曲です。


 作曲とトラック・プロデュースで参加しているのはMURO。さらに、新たにラップで参加しているのは、Lick-GとRAU DEFです。Lick-Gは、今春に開催された『BAZOOKA!!!第9回高校生ラップ選手権』で準優勝を果たしたラッパー。つまりまだ高校生なのです。RAU DEFは、かつてZeebraとのビーフも話題になったラッパーで、2015年にはSKY-HIが主宰するレーベル<BULLMOOSE>からアルバム『ESCALATE II』をリリースしています。


 MURO、RAU DEF、Lick-G。要は、ヒップホップの大御所、中堅、若手が一堂に会しているのが「Walking on Water Remix (feat. Lick-G & RAU DEF)」という楽曲です。これをメジャー・フィールドに届けてしまうSKY-HIのプロデューサーとしての才覚には思わずうなりました。


 カップリングの「ナナイロホリデー (TJO Weekendisco Remix)」は、SKY-HIの2016年のシングルにして、『OLIVE』にも収録されている「ナナイロホリデー」のリミックス。DJとして活躍するTJOがリミックスを手がけ、サウンドは原曲とは様変わりしています。エレキ・ギターのカッティングを軸として、ブラスやピアノの音色をアクセントにした、アーバンなディスコ・ナンバーになっているのです。


 なお、CDには未収録ですが、iTunes Storeでは「リインカーネーション(qlius Remix)」を限定収録。こちらも『OLIVE』収録曲ですが、qliusによるリミックスの結果、トロピカル・ハウスに変貌しています。


 SKY-HIの本領とは、現在の洋楽の潮流を押さえたサウンドプロダクションを志向しながら、しっかりと日本のメインストリームに届けていることです。SpotifyやApple Musicでアメリカのチャートを聴いた後に違和感なく聴けるのがSKY-HIであり、日本のアンダーグラウンド勢とも接近してほしくなるのがSKY-HIというアーティスト。『Silly Game』とその収録曲は、SKY-HIの独自の才覚と立ち位置を再確認させるシングルです。(宗像明将)