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長谷川博己VS香川照之の激しい攻防戦 『小さな巨人』の勝負はいよいよファイナルへ

2017年06月12日 12:13  リアルサウンド

リアルサウンド

 劇中で何度も、何度も、「敵は味方のフリをする」という言葉を耳にし驚かされてきたが、またしてもここまで綺麗に驚かされるとは思いもしなかった。香坂真一郎(長谷川博己)と小野田義信(香川照之)の対決はクライマックスに突入。『小さな巨人』(TBS系)第9話のラストでは、「香坂vs小野田」の激しい攻防戦が繰り広げられた。


(参考:長谷川博己の敵は一体誰なのか? 『小さな巨人』が描く“組織”という怪物


 「香坂vs小野田」というカードは、これまで何度も行われてきた。しかし、第9話は最終回を目前とした、セミファイナル。一筋縄では終わらなかった。『小さな巨人』のキャストによる熱い演技は、今シーズンのドラマにおいて一番と言える。捲し立てる長台詞と叫びにも似た声、一部では“顔芸”とも言われているいきり立った表情は、画面越しからも熱量と緊張感を感じさせる。真正面からの顔面接写をメインとしたカメラワークも、ドラマの臨場感を生み出していた。


 今回の第9話がこれまでのカードと一味違ったのは、マウントの取り合いが何度も続いたところにある。最初に形勢逆転をしたのは、香坂が思わず「ふっ」と声が出てしまうほどに、ニヒルな笑みを浮かべたシーン。「このまま終わるわけには、行かないんです」というセリフと共に、早明学園の裏帳簿を手にし、破れたページ部分には小野田の名前が載っていたのではないか、と攻め立てる。小野田と早明学園の富永専務(梅沢富美男)、金崎玲子(和田アキ子)は裏金で結ばれた“腐った絆”にあるというのだ。さらに、香坂の父親である敦史(木場勝己)は、過去に小野田によって内部告発を受け、捜査一課から所轄に左遷させられていた。それは、小野田が元捜査一課長である富永と裏で繋がっていたから。香坂は小野田を“裏切り者”呼ばわりする。これに、小野田は小刻みに首を上下させながら激昂するも、香坂は彼を論破できない。


 “警察組織が抱える闇の全て”が入った金庫が、小野田の椅子の後ろには隠されていた。香坂は金庫の中に裏帳簿の破れたページがあることを確信していた。「お前はこの十字架を背負える覚悟があるのか!」、小野田のものすごい見幕に、思わず香坂は顔を背け、目を伏せ、悔しさを滲ませる。しかし、“見えない敵”に眩しいほどの正義で立ち向かってきた香坂が、ここで終わるはずはない。「覚悟ならある!」。その決意を聞いた小野田は、金庫に眠る“闇”と香坂を対面させる。


 金庫に入っていたのは、思っていた通り、裏帳簿の切れ端のページ。そこには、香坂の思いもしなかった“裏切り者”の名前があった。「敵は味方のフリをする」「絆」「正義とは何か」「組織の重圧」、様々な言葉が脳裏をかすめる瞬間だ。香坂の中で全てが音を立てて崩れ去ったのだろう。手は震え、顔は恐怖で歪み、近づいてくる小野田に香坂は尻餅をつく。「本当の裏切り者はーー」、香坂が放った“裏切り者”という言葉を返し、とどめを繰り出す小野田。恐怖で今にも泣き出しそうな香坂に顔を近づける小野田。香川ほど、ヒール役が似合う役者も中々いない。


 決着は小野田へと軍配があがったものの、何度も立ち上がってきた香坂がただで終わるわけはない。最終回では、小野田、そして組織という巨大な怪物に、どのようにして立ち向かっていくのか。


(渡辺彰浩)