長時間労働が問題視されて久しいが「効果的な対策は中々ない」と感じている企業も多いのではないだろうか。そんな中、富士通エフサスが開発した、残業申請をしていない社員の端末を強制終了できるシステム「IDリンク・マネージャー」が注目されている。
同システムは改正労働基準法が施行された2010年にソフトウェア版が発売。今年5月29日にクラウド版がリリースされた。
残業内容の確認が上司と部下のコミュニケーションにも
IDリンク・マネージャーはパソコンの利用時間や業務内容を「見える化」することで長時間労働やサービス残業の抑制を図るシステムだ。
残業時間になると利用しているパソコンに警告画面が表示される。画面の約70%を占有する大きなポップアップで、残業申請を行うまで操作が困難になる。無視して作業を続けた場合、パソコンを強制シャットダウンさせる設定を行うことも可能だ。
残業を行う場合は、パソコン使用の延長時間や申請理由を入力。それを上司が確認し、許可が出ればパソコンの使用を続けることができる。
しかし「強制シャットダウン」とは中々気合の入った仕様ではないか。キャリコネニュースの取材に同社広報担当は「残業申請をすればシャットダウンはされませんが」とした上で、
「残業を抑制した企業としては、ここまでしないとラチがあかない、という思いがあるのでしょう。シャットダウンするよう設定している企業も実際にあります」
と話す。同システムを導入した大和ハウス工業は、2015年度の年間所定外労働が前年度に比べ44時間減の378時間となった。残業が約1割程度減った、ということだ。
富士通エフサスも2016年から導入している。同社担当者は「平均で月2、3時間は減りました」といい、さらに効果は残業時間抑制だけではないと話す。
「残業をする場合、業務内容や理由などを記入しなくてはいけないため、上司が部下の仕事をより把握するようになりました。残業が特定人物に偏っているのであれば再分配できますし、上司と部下のコミュニケーションがしっかり取れるようになりましたね」
大企業の残業時間、公表義務化でニーズ高まる?
5月には、厚生労働省が2020年にも従業員の残業時間の公表を大企業に義務付けると発表した。従わなければ処分を受けるため、こうした残業を「見える化」するシステムは今後もニーズが高まっていくと考えられる。
ソフトウェア版はすでに約60社13万ライセンスが使用されている。クラウド版は2020年までに売上400億円を目指す。ソフトウェア版発売当初は建設業、不動産業、流通業での導入が多かった。担当者は「今までは大企業での導入が多かった」というが、
「最近は中堅企業からの問い合わせも増えています。クラウド版は必要なときに必要な分だけ利用でき、一人あたり 980円で使用できるので導入しやすいと考えています。業種や規模関係なく、残業時間を抑制したい企業に導入していただけたら」
と話していた。