6月11日現地時間午後2時、F1カナダGP決勝がスタートを迎えた。この日は朝から気温が高く、気温は28度、路面温度は41度まで上がっているが、体感温度はもっと高い。当初は雨の懸念もあった日曜午後だが、降水確率は0%とドライのレースとなった。
予選でクラッシュを喫したザウバーのパスカル・ウェーレインはギヤボックス交換で5グリッド降格が決定し、リヤウイングのアッセンブリーも交換したがこちらは予選時と異なるスペックであるためピットスタートが義務づけられることとなった。それ以外のグリッド順に変更はない。
ウルトラソフトと他コンパウンドのタイム差が大きいだけに、ほぼ全車がウルトラソフトでスタートに臨む。18番グリッドのケビン・マグヌッセンとピットスタートのウェーレインのみがスーパーソフトでのスタート。
11番グリッドのダニール・クビアトはクラッチのトラブルでフォーメーションラップに出て行くことができなかったが、なんとか息を吹き返して隊列に追い付いた。しかし11番グリッドにはついたものの、SCライン1の前に隊列に追い付けなかったためドライブスルーペナルティが科された。
ポールポジションのはミルトンが好加速を見せたのに対し、2番グリッドのセバスチャン・ベッテルは加速が鈍くターン1までにアウトからマックス・フェルスタッペン、インからバルテリ・ボッタスに前に出られてしまう。
前がやや混乱したままで迎えた次のターン3のアプローチで、インに寄せたカルロス・サインツJr.がロマン・グロージャンと接触してコントロールを失いフェリペ・マッサのマシンを巻き添えにしながらバリアに突っ込んだ。これで2台が早くもリタイアし、グロージャンもピットイン。
セーフティカー導入を経て4周目にレースが再開されると、1コーナーまでに3位ボッタスが2位フェルスタッペンに仕掛けようとするが抜けず。ターン7の立ち上がりでは6位キミ・ライコネンがワイドになりウォールをこすってセルジオ・ペレスに先行を許してしまった。
スタート直後のターン1でフェルスタッペンに接触されてフロントウイング右翼端板にダメージを負ったベッテルはダメージが進んでしまい5周目にピットインを余儀なくされる。ノーズ交換とともにスーパーソフトタイヤに交換してトップから約30秒遅れの最後尾でコースに戻った。
11周目、フェルスタッペンがターン2出口でストップ。これでVSCが導入されこの間に8位ニコ・ヒュルケンベルグがピットインするが、静止時間が6.3秒でギャンブルは失敗といえた。
14周目にバーチャルセーフティカー(VSC)が解除されると、タイヤが温まらないのかストフェル・バンドーンがマグヌッセン、ランス・ストロール、ヒュルケンベルグに立て続けにオーバーテイクされる。一方でフェルナンド・アロンソはクビアトのドライブスルーペナルティで得た7位をキープして走るものの、前のフォース・インディア勢とは1周0.5秒ほどのペース差がありついていくことはできない。「向かい風が強くストレートでポジションを守ることが難しい」とアロンソは無線で訴える。
17周目にライコネンがピットインをすると、翌周にはダニエル・リカルドが反応、19周目にはペレスも反応するが3台の順位は入れ替わらなかった。
ただしリカルドだけは、ほとんどタイム差がないものの保ちが良いとされるソフトタイヤに履き替えた。22周目にはボッタスもピットインしソフトタイヤに履き替える。
順位は首位ハミルトンの25秒後方にまだピットストップを終えていない2位エステバン・オコン、その直後にピットイン済みのボッタス。10秒離れてリカルド、ペレス、ライコネンの4位争い、その5秒後方に7位ベッテル、まだピットインをしていないウルトラソフトのアロンソも8位でほぼ同じペースで走行を続けている。
その後ろには25周目にストロールをバックストレートで抜き去ったヒュルケンベルグ、ストロールがピットインした後はクビアトとマグヌッセンが10位を争う。
首位ハミルトンは32周目まで引っ張ってピットインしスーパーソフトに換える。ボッタスから突き上げをくらう2位オコンもピットインしライコネンの後方6位でコースへ戻った。
これで上位は全車がピットストップを終え、1位ハミルトン、2位ボッタス、3位リカルド、10秒離れて4位ペレス、5位ライコネン、6位オコン、そして7位ベッテルが僅差で続くというオーダーになった。
アロンソはノンストップのまま8位で走り続けているが9位ヒュルケンベルグらとの差はじわじわと縮まっていく。
11位マグヌッセン、12位バンドーンもピットインせずに走り続けており、この3台がお互いを見合ってレースをしている状況だ。
上位では41周目にライコネンがピットインし、ウルトラソフトで膠着状態の打開を狙い43周目には首位ハミルトンより1秒以上速いファステストラップを記録した。
アロンソは42周目にピットインし10位マグヌッセンの7秒後方へ。マグヌッセンは46周目にピットインし15位へ後退、しかしアロンソはストロールに抜かれて11位に落ちてしまう。
だが54周目にクビアトがエンジンからのバイブレーションを訴えてピットイン。フォーメーションラップでの走行でさらに10秒加算ペナルティを科されていたクビアトはここでそれを消化する必要があったが、タイヤが準備できておらず混乱し大幅にタイムロスしてしまい、一度はコースに戻ったもののリタイア。これでアロンソは再び10位に浮上した。
一方で3位リカルドを先頭とした争いはフォース・インディア勢がぴたりと後方に付けるが抜けず膠着状態。フォース・インディアは、タイヤが新しいオコンを前に行かせてリカルドにアタックさせる戦略を採るがそれを実行するまでの話し合いに時間を要する。
一方でその後方のベッテルは順位を失うことなくピットインしてウルトラソフトに履き替え、ハイペースで猛攻を仕掛けてくる。
60周目にはライコネンがターン13でオーバーシュートしベッテルが前に出て6位へ浮上。さらにファステスト連発の走りで前の3位集団を追いかけオコンの背後に迫る。
オコンは65周目のバックストレートでペレスのスリップストリームに入るがペレスがインをブロックしたため次のメインストレートへの立ち上がりが遅れてベッテルに攻め込まれ、ターン1でオーバーシュートして5位を奪われてしまう。
ベッテルは68周目のターン13でペレスのインを突いてパスし4位まで浮上。さらに3位リカルドを0.6秒差まで追い詰めたものの追撃はここで終わりベッテルは4位でレースを終えた。
アロンソは最後まで10位を走行していたが68周目のターン8のブレーキングで「エンジン! エンジンがブローした」とマシンを止め、完走扱いにはなったものの16位。マクラーレン・ホンダは今回もノーポイントに終わってしまった。
ハミルトンはスタートから無敵の独走で70周を走り切り優勝。ボッタスは20秒届かず2位に終わった。フォース・インディア勢は結局最後まで順位を入れ換えることなくペレス5位、オコン6位でフィニッシュ。
ピットストップ後にマシンに不調を来たしたライコネンは完走を優先させてペースを落とし7位、ヒュルケンベルグが8位、そしてストロールが9位に入り母国レースでついに自身初入賞を果たした。
10位にはグロージャン、いまだ無得点のジョリオン・パーマーはわずか1秒差で11位に終わった。