5月から続いたインディカーの連戦も、ようやくこの第9戦テキサスで区切りを迎える。特にインディ500チャンピオンである佐藤琢磨にとっては、ここ数戦は忙しいという言葉では済まされないくらい過酷なスケジュールだった。
それでもデトロイトではポールポジションを奪うなど、神がかり的な速さを見せていたのは、もう奇跡に近い。
このテキサスはあまり得意とするトラックではなかったが、予選では8番手とまずまずのポジションを得た。特にコースを改修し路面とターンのカントが変わり、ライン取りとマシンセッティングに微妙な変化が生じたにも関わらずだ。
さらに金曜日の予選日は雨となりスケジュールも変わっていたし、これも4台体制で走るアンドレッティ・オートスポートの成果と言えるだろう。
テキサスの陽が西に傾きかけた頃、グリーンフラッグとなり248周の長いレースが始まった。序盤集団に飲まれやや順位を落としたが、冷静に周回を重ねていた琢磨。
不運が訪れたのは1回目のピットストップだった。タイヤ交換と給油をしてコースに戻ろうとした瞬間、ジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)に弾かれる形でエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が琢磨と接触!
両マシンはその場で動けなくなる。カストロネベスはコースにすぐ戻ったが、琢磨はクルーに戻され、フロントウイングを交換。一部マシンのチェックをしてからコースに戻るがすでにラップ遅れとなり、厳しい戦いを強いられる。20番手から17番手前後を争いながら周回を重ねた琢磨だが、途中カストロネベスのクラッシュによるイエローコーションなどで周回遅れの挽回に成功した。
さらに波乱が起きたのは150周過ぎ。ヒンチクリフなど10台が絡むビックアクシデントがあり、琢磨はこれをうまくイン側に避けてクリア。しかしレースは赤旗で中断となり、7番手まで自動的にポジションを上げた所でピットレーンでレース再開を待つことに。
テキサス戦では、持ち込んだタイヤが合わずファイアストンの右フロントタイヤにブリスターが発生。協議の末、安全対策のために残りの周回は30周ごとにイエローコーションが出されることになり、残り90余のレースで二度のイエローが出る計算となった。ここまで生き残ったのは22台中12台しかいない。
リスタート後、琢磨は7番手からうまいポジション取りで3~4番手まで浮上していた。トップを争うのはペンスキーのパワー、パジェノー、ガナッシのディクソン、そして追い上げてきたカナーンなど強豪ばかり。レースは当然白熱したものとなった。
先頭のパワーとディクソンがリードするものの、琢磨、パジェノー、そしてカナーンもこれを追う。途中、琢磨が見せた3ワイドからのオーバーテイクは、この日のいちばんの見せ場だっただろう。
レースもあと5周となった時、メインストレートのイン側にいた琢磨は前後と右側を塞がれて、完全にボックスにハマる状態に。行き場を失いつつイン側のグリーンに乗り上げてバランスを崩しスピン! 右前にいたディクソンと共にクラッシュし、レースを終えてしまった。
一度ラップ遅れからトップ争いに復活するなど、今日は強運が味方していただけに悔やまれるクラッシュだった。琢磨の最終順位は10位に。だがカストロネベス、ディクソンもチェッカーを受けなかったため、ポイントランキングは3位を死守した。
琢磨は「今日はラップ遅れからトップ争いに戻れていただけに本当に悔しい。途中アクシデントがあったりしたけど、最後までフィニッシュしたかったですね」と唇を噛んだ。
この後、琢磨は身支度を整えて、ファンの待つ日本へ帰る。