10日にインディカー・シリーズ第9戦がテキサス・モータースピードウェイで開催。アクシデント多発のサバイバルレースをウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が制し、今季2勝目を挙げた。
佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は、終盤見応えあるトップ争いを見せるも、残り5周でイン側の芝生を踏んでバランスを崩し、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)を巻き込んでクラッシュ。10位に終わった。
ターン1~2のバンクを緩やかにし、コース幅を広げ、舗装も全面新しくしたテキサス・モータースピードウェイ。
予選ではホンダ勢がパワー&エアロのアドバンテージを見せつけてトップ8を独占した。ポールポジションはデビュー7シーズン目のチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)が初めて獲得。2周連続アタックでの平均スピードは222.556mphで、2003年にジル・ド・フェランがダラーラ・トヨタ(チーム・ペンスキー)で記録した222.864mphは今年も破られなかった。
予選2位はポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)で、3位はアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。4位はトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、5位はセバスチャン・ブルデーの代役として走るトゥリスタン・ボーティエ(デイル・コイン・レーシング)だった。
デトロイトを走ったエステバン・グティエレスはオーバル走行経験がないため、テキサスへの出場を認められなかった。2015年の最終戦ソノマ以来となるインディカー・レース出場をするボーティエは、チャンスを活かし、好パフォーマンスを発揮した。
予選6位はマックス・チルトン(チップ・ガナッシ・レーシング)。ガナッシはフロントローを独占した上に、4台すべてをグリッド3列目までに並べた。
予選7位はミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)で、予選8位はインディ500ウイナーの佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)だった。
インディ500では決勝でスピードを見せられなかったガナッシ勢だったが、テキサスではレースでも速さを保っていた。しかし、彼ら以上にレースでのスピードを持っていたのがシボレーのエース、チーム・ペンスキーだった。決勝レースではイニシアチブを握り、ウィル・パワーが優勝。シモン・パジェノーが3位でゴールした。
ペンスキー勢の優位は空力セッティングの良さにあった。ジョセフ・ニューガーデンが予選を犠牲にしてまで決勝セッティングの向上に努め、その効果が発揮されたのだ。バンクの傾斜が小さくなったターン1~2がシングル・レーンになるから、レースはつまらなくなる。そんな予想がスタート前にはなされていたが、それは完全に裏切られた。
シボレー勢トップの予選7位だったパワーは、1回目のピットストップを迎える前に3番手まで浮上。ロッシのクラッシュで出されたイエローを利用したピットストップでニューガーデンの後ろの2番手に浮上し、リスタートの後にトップに躍り出た。
その先はシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)が背後を固め、パワーが延々とレースをリード。しかし、レースの緊張感はずっと高いままだった。2番手を走るパジェノーには次々とアタックが仕掛けられ、その後方でも激しいポジション争いが続いていたからだ。
パワーとパジェノーのタッグがレースをリードし、その牙城を崩そうとディクソンがアタックを続ける。そうした展開が続いたが、152周目にターン3で多重アクシデントが起きる。
カナーンとヒンチクリフが接触。ヒンチクリフは彼の更に外側にいたチームメイトのアレシンとも接触し、ともにスピン。後続が次々巻き込まれた。8台がダメージを受ける凄まじい事故となった。幸いけが人も出なかったが、今年もテキサスはスリルに満ちたレースとなった。
エントリーの半分の11台が、赤旗で30分ほど中断した後のリスタートに臨んだ。そして、赤旗以前とはまた違ったレースが始まった。タイヤの耐久性を考慮して、30周ごとにフルコース・コーションを出し、ピットストップでタイヤ4本を交換することを義務付ける急造ルールが採用されたためだ。ゴールまでには2回のピットストップが必ず行われる。
優勝争いに生き残ったのはパワー、ディクソン、パジェノー、琢磨、グラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、カナーンに絞られた。
248周のレースの226周目、最後のピットストップが行われた。コースに戻ったコンペティターたちのオーダーは、パワー、ディクソン、琢磨、パジェノー、チルトンとなっていた。
ブロッキングのペナルティで2周遅れに陥っていたカナーンは、30周毎で出されたイエローを利用してリードラップに復活。残り19周で最後のリスタートが切られた。
逃げるパワーと、トップを奪うべくアタックを仕掛けるディクソン。すぐ後ろでは琢磨とパジェノーがポジション争いを行い、そこへカナーンが一気に追いついてきて、更にマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)も優勝争いに加わった。
そして245周目に入るグランド・スタンド前、琢磨が内側のタイヤを芝に落としてバランスを崩し、ディクソンに接触。2台はクラッシュし、チルトンとコナー・デイリー( AJ・フォイト・レーシング)が巻き込まれた。
このままレースはイエローで終了。優勝はパワー、2位カナーン、3位パジェノーという結果となった。シボレーが今季4勝目を挙げ、ホンダの連勝は3でストップした。
今シーズン2勝目、キャリア31勝目を挙げたパワーは、「ディクソンにゴールラインで逆転される可能性を心配していた。妻の故郷テキサスで勝つことができて最高だ。パックレーシングではトップを走るのがいちばん楽。今日はまさにそれだった」とパワーは語った。
「悔しいですね、優勝争いができていただけに。イン側の芝に追いやられてしまって、ボトミングしてコントロールを乱してしまった」
「ピットでのアクシデントで1周遅れに陥ってからは我慢の展開が続いていましたが、イエローでトップと同一ラップに戻って、アクシデントをうまく切り抜けて上位に復活。そこからはマシンの感触も良く、最後の一つ前のスティントではトップのパワーに並びかけるところまでおけました」
「しかし、最終スティントでは前の2台にとうせんぼされてしまって、イン側に取り囲まれて前に出るのが難しい状況が続いてました。最後にまたあのアウトからのパスでトップに出たかった!」と琢磨は悔しがっていた。
ポイントは引き続きディクソンがトップ(326点)で、今日3位フィニッシュしたパジェノーが313点で2位。琢磨はリタイアしたが10位フィニッシュとなり312点でランク3位をキープ。
序盤のクラッシュでリタイア、20位となったカストロネベスはランキング4番手(305点)に後退し、パワーは今日の優勝でランキングを8番手から5番手に上げた。ポイントは286点でトップとはキッカリ40点差だ。