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KAT-TUN亀梨和也、“アイドル性”封印して新たなステップへーー『美しい星』ストーリーを彩る演技

2017年06月10日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「自分以外の家族が宇宙人だったらどうしよう」。幼い頃、一度はそんな妄想をしたことがあるのではないだろうか。そんな妄想のごとく、普通の家族が次々に宇宙人として覚醒していく映画『美しい星』が、5月26日に公開された。


参考:亀梨和也“ぼんきゅっぼんの法則”で大逆転! 『ボク、運命の人です。』で作り出した運命とは


 といっても、単に「家族が宇宙人だった」という話ではない。『美しい星』は、故・三島由紀夫原作のSFエンターテイメントだ。お天気キャスターの父・重一浪、野心あるフリーターの息子・一雄、美人すぎて浮いてしまっている女子大生の娘・暁子、孤独に暇を持て余す主婦の母・伊余子が、ある日突然火星人・水星人・金星人・地球人として覚醒。地球温暖化から「美しい星・地球」を救うため、様々な奮闘を重ねていくというストーリーだ。


 この映画の良いところは多々あるが、中でも「摩訶不思議な“何だコレ”感溢れるストーリー」は独特で、観客の心を惹きつける。複雑にも単純にも取れる物語は、一見の価値ありだ。そんなストーリーを盛り上げるメインキャラクターの一人である一雄を演じるのが、KAT-TUN・亀梨和也。


 亀梨といえば、今年3月25日公開の『PとJK』の主演を勤めたばかり。少女漫画の王道ラブストーリーで、亀梨のイメージにもピッタリ合っていた。しかし、『美しい星』は『PとJK』とは真逆のSFエンターテイメント作品。にも関わらず、リリー・フランキーや佐々木蔵之介などのベテラン俳優にも負けない演技を披露し、意外にもはまり役となったのではないだろうか。


 『美しい星』の中では、“アイドル・亀梨和也”は完全に封印されており、カッコつけるシーンもない。純粋に、“思い描く将来と現在の自分に葛藤しながら悩む青年”として見ることができる。インタビューで「(演技は)監督に身を委ねていた部分が大きい。セリフの音とか目線をすごく細かく演出してくださったので、監督の脳みそにある映像を体現するように意識してましたね」(引用:リリー・フランキーが亀梨和也を「たくましい」と称賛、「美しい星」特別授業)と話しているのを見ると、吉田大八監督の指導と亀梨の表現力がうまく合致したと考えられるだろう。


 しかし、完全に監督に委ねきっているわけではなく、『美しい星』に臨む亀梨の気合いも充分だったようだ。事前に自転車の乗り方を練習していたというだけあって、メッセンジャーとして働いているシーンは感心してしまうほど完成度が高かった。「常にどういう自分でありたいかっていう中で仕事をさせてもらっているので、若い子たちの野望が薄れていると言われる今の世の中では、野心は濃いほうかもしれないです」(引用:リリー・フランキーが亀梨和也を「たくましい」と称賛、「美しい星」特別授業)という言葉の通り、亀梨の野心が見えるシーンである。こういった亀梨の心持ちは、政治家を志す一雄の野心と通ずるところがあるのではないだろうか。


 亀梨にとっては2013年の『俺俺』に引き続き、純文学原作への出演となった『美しい星』。演じる役との共通点がありつつも、持ち前のアイドル性を封印し、ストーリーの彩りに徹したことは亀梨にとって“俳優”としての次なるステップにつながっていると言えよう。テレビドラマに映画と、精力的に活動する亀梨の今後の飛躍にも期待したい。(文=高橋梓)