ル・マン24時間や北米のデイトナ24時間などで、これまでも印象的なレースカーのカラーリングを披露してきたBMWのアートカー・シリーズ。その最新作となる18作目が、5月31日に北京民生現代美術館においてワールドプレミアとなり、国際的な名声のある中国人マルチメディア・アーティスト、ツァオ・フェイ(曹斐)がBMWアート・カーを制作する最年少かつ初の中国人アーティストとなった。
1978年生まれのフェイは、2015年からBMWのプロジェクトに参画し、スイスでは女性レーシング・ドライバー、シンディ・アレマンとともにレースにも参戦。
本社へも訪問を重ね、BMWグループのエンジニア、デザイナー、デジタル・スペシャリストと密接な共同作業を行ったという。
この作品は、中国における変化のスピード、伝統と未来を反映したもので、数千年にわたる歴史を掘り下げたうえで、アジアが次の1000年に向けて展開していくに際し、古来の精神的智慧に敬意を表したものだと、彼女は説明する。
このマシンは、オラフ・カストナー(BMWグループ中国地域社長兼CEO)、イェンス・マルカルト(BMWモータースポーツ代表)、アウグスト・ファーフス(BMWモータースポーツのレーシングドライバー)、ファン・ディアン(中国中央美術学院院長)の列席のもとで披露され、オリジナルのカーボン・ブラックのBMW M6 GT3に、専用アプリ上のAR技術を用いた拡張現実空間でカラフルな光の粒子を描写。ボディに反映する光の流れとともに、自動車のような新しい物にはお祓いをするという、アジア全域でよくみられる伝統的な霊的儀式をモチーフにした。
「私にとって光は思考を表わします。思考の速度は測定できません。第18代のBMWアート・カーは人間の心の限界となるような体験を問い直します。迎えつつある新しい時代では、無人操作や人工知能により、心が物を直接コントロールし、思考を伝達することができます。新しい時代への架け橋の鍵を握るのは、どのような態度や気質なのか、という問いがあります」と、アートワークのコンセプトを解説するフェイ。
このマシンは、2017年11月17~19日にマカオで開催されるFIA GTワールド・カップに参戦する計画となっており、そのステアリングを握る予定のファーフスも「ツァオ・フェイのBMWアート・カーで参戦できることは、私にとって大きな名誉だ」と語った。
「(デイトナでドライブしたジョン・バルデッサリのM6 GTLMに続き)今年2台目のアートカーをドライブするチャンスに恵まれ、とても誇りに思う。レーシングドライバーにとってこれはまったく類を見ないこと。このプロジェクトにもっと深くのめりこみ、携わるアーティストの考えと、その背後にある哲学をより一層学ぶことを楽しみにしている」