開幕から7戦で7人のウイナーが誕生している2017年のインディカー・シリーズ。今年最初のリピートウイナーになったのはグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。彼はデトロイトでのダブルヘッダー2レース両方を勝利した。
レイホール二世の活躍にケチをつける気はまったくない。しかし、ダブルヘッダーというものは、レース1までにマシンをうまく仕上げたチームが2レース目にも活躍するのが道理だ。年間3回ストリートで……というのは多過ぎ、そして偏り過ぎだったが、今のように年1戦だけならダブルヘッダーもアリだ。
レイホールは第3戦終了時でポイントスタンディング17位、インディ500終了時で同15位と完全にスタートダッシュに失敗していたが、それは不運に見舞われたことにも要因があった。
それがデトロイトでの2勝でランキングは6位まで上がった。トップのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)との差は52点。もちろん、まだシーズンは折り返し点前なので逆転チャンピオンは十分に可能だ。さらにインディカー・シリーズは賛否両論の「最終戦はポイントが倍!」というルールもある。
レイホールは1989年の1月生まれ。現在28歳。いま、彼をトップコンテンダーと呼んでいいのか? チャンピオンになる器と捉えていいのか? 答えはイエスだと思う。イエスと言えるドライバーへとなるには時間は随分かかったが成長した。
ニューマン・ハース、チップ・ガナッシといったトップチームで芽が出なかったのは、自身のキャリアに対する本気度が低かったためだろう。父ボビーのチームに来てからも二世ドライバーの悪いところが目立っていた。
それが、誰がどう説き伏せたのか、自分で気づいたのかは不明だが、2015年に突如として大きく進化した。フォンタナとミドオハイオで優勝し、初めてチャンピオン争いに加わった。しかし、ポコノでブツケられてランキングトップ3入りを逃した。
昨年、グラハムは結婚した。お相手はドラッグレーサーだ! それも、ドラッグレース世界のレジェンド=ジョン・フォースの娘さん。偉大に過ぎる父をもつ大変さもわかり会えるパートナーと出会えたこともグラハムの変身に貢献しているのかもしれない。
2016年、ホンダエアロの不利が拡大。レイホールが2年続けてチャンピオン争いを行うことはできなかった。しかし、テキサスで勝利を記録し、存在感を示した。
今年はホンダ勢の不利が明らかに小さくなっている。昨年10勝を挙げたチーム・ペンスキーもそれほど勢いはない。そして、レイホールの実力は更に伸びていることがデトロイトでの勝ちっぷりに現れていた。
レース1は予選でポールポジションを獲得し、決勝でもスピードの違いを見せつけて勝利。レース2では佐藤琢磨がポールポジションを獲得。アンドレッティ・オートスポート勢にフロントローを奪われたが、動ずることなく序盤はタイヤと燃料をセーブ。
相手のパフォーマンスが下がったところでパスし、トップに立つや後はひとり旅。3ストップ作戦のジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が終盤に差を詰めてきていたが、落ち着いて危なげなくゴールまでマシンを運んだ。
レース展開が大きく味方したことと、そうした戦いのできるチームで戦っていたことによってデビュー2年目、19歳での最年少優勝を記録したレイホール。この勝利が逆に彼のキャリアを遠回りさせることに繋がったのかもしれない。その後の6シーズンで優勝なし。先週のデトロイトでの2勝でようやく通算勝利数は6つになった。
ポールもまだ3回と少ない。その背景には明らかな不利の1台体制での参戦がある。それを乗り越えての奮闘は素晴らしい。チームのエンジアリング部門の強化が結実し始めている。
父ボビーの作り上げて来たチームは、小さいながらも優れた戦闘集団だ。スタッフは仕事に強くフォーカスし、献身的に働く。グラハムは彼らに敬意を示しつつ、走りやファイトぶりで活気付け、リーダーシップを発揮している。
着実に絆を強めて行っているレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、あとは2カー以上の規模拡大が必須だ。レイホールをプッシュするようなチームメイトが不可欠。それが叶えば親子二代のチャンピオン誕生が見られるはずだ。