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ダカールラリー連覇中の王者プジョー、度重なるルール変更議論に対し撤退を示唆

2017年06月08日 17:12  AUTOSPORT web

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2017年大会から投入された『プジョー・3008DKR』
プロトタイプの4WDモデルに対して、レギュレーション上で有利な状況が続くラリーレイド界の2WDモデル。その規則見直しの機運が高まっていることを受け、2016年、2017年とダカールラリーを制しているプジョー・スポールが「もし規則改正が断行されれば、撤退も辞さない」と、強硬な姿勢を見せている。

 2017年7月に開催が予定されている次回の世界モータースポーツ評議会(WMSC)定期会合において、プジョーなどがエントリーするバギー・スタイルのクラスに対し、車両重量とリストリクターの見直し等により、4WDモデルとの性能均衡を図ろうという議題が取り上げられる見込みとなっている。

 これはダカール・ラリーを統括するASOアモリー・スポーツ・オーガニゼーションと、FIAのワールドカップ・クロスカントリー・ラリーのワーキンググループの発議によるもので、この動議が実現すれば、2018年1月のダカールラリーで3連覇を狙うプジョー3008DKR擁するプジョー・スポールにとって、大きな痛手となる。

 プジョーのワークスチーム代表を務めるブルーノ・ファミンは、もしこの方針が実行されれば「我々はラリーレイドの世界から去ることになるだろう」と示唆した。

「クロスカントリー・コミッションが提案した今回の規則改革コンセプトが、次回のWMSCで可決し採択されるようなことがあれば、我々は活動を続けることさえ考え直さなければならない」とファミン。

「我々は勝利する可能性が存在する場合に限り、ダカールのスタートランプに登ることになるだろう」


 プジョーの対抗勢力となる存在として、BMWの支援を受けるX-RAIDチームが挙げられるが、これまでのミニ・オール4レーシングと、今季からワールドカップ・クロスカントリー・ラリーに投入している新型モデル、ミニ・ジョン・クーパー・ワークス・ラリーはどちらも全輪駆動の4WDモデルだ。

 X-RAIDチームのボスで、元ミツビシのWRCチームも率いたスヴェン・クワントは、この規則変更が実行されれば「プジョー3008DKRを4WDモデルと同等の競技レベルに揃えることができるだろう」と語った。

「プジョーがここ近年、イベントを席巻する競争力を発揮している背景にはレギュレーションによるバギー優遇の要素がある。それが支配的な際には、こうした(度重なる規則改正議論の)動きを織り込んでおくべきだろう」とクワント。

 プジョー・ワークスに所属し、ラリー界の“帝王”として君臨するカルロス・サインツも、代表であるファミンの発言に同調し「規則の変更はあまりに行き過ぎたステップだ」とコメントした。

「かつての我々は1kmあたり1秒も遅いマシンで戦いに挑んだが、誰も『こんな規則は間違っている』なんてことは口にしなかった」

「しかし、今ではプジョー・チームが素晴らしい仕事を成し遂げた陰で、当事者以外の誰もが不平を言うようになっている」

「たしかに、コンペティションの側面からは差が大きいことは理解するが、まだいくつかのシチュエーションで4WDモデルのアドバンテージが残されていると感じる」

 伝統のダカール・ラリーで30年ぶりの3連覇を狙うプジョー・ワークスにとって、次回のWMSCの結論が重要な意味を持つことになりそうだ。