ル・マン24時間耐久レースを6月17日に控えたサルト・サーキットで安全性を高めるコース改修が行われた。しかし、ドライバーからはル・マンならではのキャラクター性が失われるとの声が挙がっている。
サーキットでは安全対策として、ポルシェカーブのランオフエリアがコルベットコーナーに迫るような形で拡大された。しかし、4日に行われたテストデーでは、安全対策を評価する声は少なく、改修の方法についてさまざまな意見が飛び交った。
今年、ポルシェからWEC世界耐久選手権/ル・マンに参戦しているアンドレ・ロッテラーは「以前よりは安全になったと思う。でも、こういった形で改修が続くと、周りに何もない駐車場をドライブしている気分になる」と印象を語った。
「ポルシェカーブはル・マンを象徴するような場所だけど、今回の改修で少しスリルが減ったと思う」
「サルト・サーキットに関しては、なにか変更を加える時は注意を払うべきじゃないかな」
2015年のル・マン24時間予選セッションで、このポルシェカーブでクラッシュした経験を持つヤン・マグヌッセンもロッテラーと同様の意見を述べている。
「ウォールを動かしたり、バリアをより遠くに置くことには、必ずしも賛同しない」とマグヌッセン。
「ウォールやバリアを動かしてしまったら、ここはよくあるF1サーキットのようになってしまう。そうなれば、誰でも速く走れてしまうよ」
ル・マン24時間を主催するACOフランス西部自動車クラブでスポーティングディレクターを務めるビンセント・ボーメニルは、ランオフエリアを拡大することはコースレイアウトを変更するよりも、好ましい手段だったと述べている。
「ポルシェカーブはもっとも有名なセクションのひとつで、ふたつのウォールの間をマシンが時速250kmで駆け抜ける」とボーメニル。
「安全性を高める手段としてシケインを設けるのも、ひとつの方法だった。しかし、そうはしなかった。ポルシェカーブを駆け抜けるスピードは、ル・マンの特徴だからね」
「そのため妥協案としてランオフエリアを広げることにした」
またボーメニルは、今回の改修でポルシェカーブでマシンがコースオフし、ウォールにヒットする場合、これまでよりも衝突する角度が浅くなったと説明している。
昨年よりもウォールが奥に移動し、その手前には広いランオフエリアが追加されたため、コルベットコーナーでは、コーナーをショートカットすることも不可能ではない。
ボーメニルは、トラックリミットを厳格に運用してショートカットを阻止する考えを示したほか、ドライバー陣もコーナーにオフキャンバーがついていることから、ショートカットは難しいと示唆している。
このポルシェカーブのほかに、フォードシケイン手前にあるストレート区間のウォールも角度が変更された。この対応は2015年に起きたロアルド・ゲーテのクラッシュを受けてのもの。
ゲーテは決勝レース中、ポルシェ919ハイブリッドを操るニコ・ヒュルケンベルグに追突され、この場所でクラッシュ。このアクシデントで背中を負傷している。
またテストデーでは、トラックリミット違反を減らすために“フロッピー”とも呼ばれるコーナーマーカーも試験導入された。
このフロッピーにはスプリングが取り付けられているが、テストデーではマシンが接触すると、フロッピーが起き上がらなくなる不具合が起きた。ボーメニルは、これは試験導入直前に施した改修が原因だとして、レースまでには改善されるとしている。
「直前になって、フロッピーの高さを40cmにしようとしたんだが、そのせいで充分な深さで埋めることができなかったんだ。レースまでには対策が行われる」
2017年、ル・マン-ブガッティ・サーキットは再舗装が行われ、フォードシケイン後半から、森のエスまでの区間は新舗装となっている。