2017年06月08日 10:24 弁護士ドットコム
昨年起きた千葉大医学部の男子学生らによる集団わいせつ事件で、千葉地裁は5月29日、集団強姦の罪に問われた男子学生Aに対し、懲役4年の実刑判決を言い渡した。これで事件に関与した4人全員の1審が終わった。
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この事件は、酒に酔った女性に性的暴行を加えたというもので、元男子学生B=放校処分=には懲役3年・執行猶予5年、学生の指導担当だった男性医師C=懲戒解雇=にも懲役2年・執行猶予3年の有罪判決が言い渡され、それぞれ確定。また、元男子学生D=放校処分=は、懲役3年の実刑判決となったが控訴している。
医学部といえば、相当な学力がないと入れない狭き門だ。一般論として、裁判で有罪判決を受けた医師や医学部生はその後、医者として活動できるのだろうか。鈴木沙良夢弁護士に聞いた。
ーー医師免許が与えられないのは、どういうとき?
医師法第3条と第4条に規定があります。免許が与えられないのは(a)未成年者、(b)成年被後見人、(c)被保佐人の場合です(医師法第3条)。
また、次の場合は、医師免許を与えられないことがあります。(1)心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの、(2)麻薬、大麻またはあへんの中毒者、(3)罰金以上の刑に処せられた者、(4)医事に関し犯罪または不正の行為のあった者(医師法第4条)。
ーーすでに医師免許を持っている人は関係ないということ?
既に医師免許が与えられていても、医師免許が取り消される場合があります。たとえば、医師法第3条で免許が与えられないとされている、成年被後見人や被保佐人になったときは例外なく免許が取り消されます。
また、医師法第4条の1~4で定められた事情が生じたときや、医師としての品位を損なうような行為があったときには、「戒告」や「3年以内の医業の停止」、そして「免許の取り消し」といった処分がされることがあります。
ーー誰がどういうプロセスで判断するの?
医師が罰金以上の刑に処せられると、法務省から厚生労働省に対して情報提供がなされ、処分のプロセスがはじまります。その後、医師側からの報告書の提出、医師の意見・弁明の聴取をへて、医道審議会医道分科会で審議がなされ、この審議の結果をうけて厚生労働大臣が処分を行います。
ーースピード違反などでも、罰金以上なら免許は取り消されてしまう?
確かに、スピード超過の程度が著しい場合には、罰金や懲役刑が科せられることもあります。
この点について、医道審議会医道分科会は判断基準を公開しており、スピード違反のような交通事犯については、医師でなくても不慮に起こしてしまうこともあり得るのでそれほど重い処分にはせず、基本的には戒告等の取り扱いとする、としています。スピード違反だけで医師免許が取消しになる、ということはおそらくないでしょう。
ーー医師免許の再取得や、医学部への再入学は難しいの?
再入学については個々の大学ごとの判断になるでしょう。ただ、医師国家試験に合格したとしても、すでに述べた通り、罰金以上の刑が科せられた場合、免許が与えられない場合があります。
医師免許が取り消された場合は、再免許を申請することにより再度医師免許を得られます(医師法第7条3項)。しかし、再免許は医道審議会の意見を聞いた上で、厚生労働大臣が可否を判断することになっており、簡単に再取得できるものではありません。
ーー就職やアルバイトの際、履歴書にも前科を書かないといけない?
履歴書に賞罰の欄があるのに前科を記載しないのであれば、就職した後に前科がわかってしまった場合に、経歴詐称として懲戒の対象となることはあります。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 沙良夢(すずき・さらむ)弁護士
早稲田大学法学部卒業後、大東文化大学法科大学院を経て2006年に司法試験合格。2012年、鈴木沙良夢法律事務所開設。病院・医療法人のための法律問題解決サイト【医療法人.net】を運営。
事務所名:鈴木沙良夢法律事務所
事務所URL:http://www.iryou-houjin.net/