バイトで働いた分の給料を、その日のうちに貰いたいという人は多いようだ。求人サイトでアルバイト等を募集するとき、給料の支払い方法を「日払い」にすると、応募数が3.7倍に増えるという。
人手不足に悩む企業は解消の一手としてこれに注目しているが、毎日給料の支払い手続きをするのは事務負担が大きくなる。そこで、新しい給与支払いシステム「エニグマペイ」が、5月31日のワールドビジネスサテライト(テレビ東京)で紹介されていた。(文:okei)
従業員の満足度も上がり、アルバイトの定着率もアップ
エニグマペイはenigma社が提供する給与前払いサービスだ。同社役員はこう説明する。
「企業様のほうは負担が一切なく0円のシステムサービスです。料金は従業員から一部手数料をいただいています」
働いた分の給料がすぐに欲しい従業員が、エニグマのスマホアプリで申請をすると、いったんエニグマが企業の代わりに給与を支払う。エニグマは申請額の6%、プラス100円を給与から受け取るしくみだ。例として1万円の申請をした場合、銀行口座に振込まれるのはシステム手数料の700円を引いた、9300円になる。
従業員データと勤怠給与データを連携しているので、従業員は働いた分の給与額がスマホで確認でき、必要なとき必要なだけ受け取れるというわけだ。朝9時25分までに申請すれば、その日の12~15時までには振り込まれるという。
このシステムの導入を決めた企業のアルバイトスタッフは、日払い制度を歓迎しているようで、インタビューにこう答えていた。
「自分が困っているときでも支払いができるので、あったらすごく便利だと思う」
「やる気でます」
番組では、「従業員の満足度も上がり、アルバイトの定着率もアップする」と紹介していた。
「貧困の格差軽減」がサービスの理念だが……
確かに急にお金が必要になったとき、貯金がない状態ではこのシステムは便利だろう。手数料を取られるとはいえ、もっと金利の高い消費者金融から借金するよりはいいとも考えられる。
一方で、ネット上では「貧困ビジネス」という指摘も。金銭的に余裕がない従業員から手数料を取るのはひどい、というのだ。時給の全国平均は823円なので、700円は大きな額だ。手数料を取られるのが割に合わないと分かる人は使わないだろうが、困窮している場合はそうも言っていられない。利用者側は助かるかもしれないが、企業があえて弱者をターゲットにしているとも感じられ、少し考えてしまう。
ちなみに、同社企業サイトでは「サービス理念」を次のように説明している。
「貧困の格差を軽減するため、『勤務打刻データ』『給与データ』などの信用情報によって新たなFintechサービスを提供し、真剣に働く労働者がさらに働きやすい社会を創る」
給与前払いシステムは果たして貧困格差の軽減に繋がるだろうか。