ERCヨーロピアン・ラリー選手権の第3戦アクロポリス・ラリーが6月3~4日に開催され、2016年シリーズチャンピオンのカエタン・カエタノビッチが、スポット参戦したダカール王者ナッサー・アル-アティヤらを振り切り、今季初勝利を挙げた。
WRC世界ラリー選手権時代から「“アクロ”を制するものが、世界を制す」などといわれ、世界的な名声を得るビッグイベントとして名を馳せてきたアクロポリス。今回も全12ステージ、229.74kmのラフグラベルが舞台となり、ロングステージの多く設定されたデイ2に向け、初日のデイ1からいかにハードコンパウンドのタイヤセットを温存できるか、が勝負の焦点となった。
そのオープニングステージとなった24.81kmのSS1では、いきなりの波乱が起こる。スポーツ・レーシング・テクノロジー・チームからエントリーしていた19歳のロシア人、ニコライ・グリアシンのドライブするシュコダ・ファビアR5が、2番手以下を11秒も引き離すトップタイムを記録した直後、爆発炎上。
グリアシンと、コ・ドライバーのヤロスラフ・フェデロフはすぐさまマシンから脱出し、ことなきを得たが、ファビアは無残にも全焼し、ERCジュニアU28の競技続行が不可能な状況となってしまう。
「何が起こったかわからないんだ」と、コースサイドでマシンを見つめつつ状況を説明したグリアシン。
「僕らは普通にロードセクションを走行していたんだけど、曲がり角でいきなりリヤがスライドした。おそらく燃料タンクからガソリンがリークしていたんじゃないかと思う」
「できる限りの消火活動をしたけど、為す術がなかった。協力してくれたすべての人に感謝したい」
その後、残る5つのSSでトップタイムを分け合ったのは、今回のイベントにスポット参戦を果たしたビッグネーム、アル-アティヤ(フォード・フィエスタR5)とディフェンディングチャンピオンのカエタノヴィッチ(フォード・フィエスタR5)、そして開幕戦勝者で、初めてギリシャのステージを経験したブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)となった。
「こうしてラリーをリードできているのは素晴らしいことだね。グリアシンは本当に気の毒だった。彼が無事で良かったよ」と、2度のPWRCプロダクションカー世界ラリー選手権王者でもあるアル-アティヤ。
初日首位で終えたアル-アティヤの背後、2番手につけたマガラエスは「セットアップとペースノートを改善しながらの戦いだが、明日に向けてタイヤセットを温存できたので良かった」と満足げ。
LOTOSラリーチームのカエタノヴィッチは6SS中3つのステージでファステストを記録したものの、2回のパンクが響き、アル-アティヤから29.5秒遅れの3番手と、乱高下の大きい1日となった。
続くデイ2は、早朝のSS7でカエタノヴィッチがベストタイムを叩き出し快調にスタートした一方で、前日のトップ2にそろって不運が襲う。
アル-アティヤのフォード・フィエスタR5は、最初のステージでエンジンが始動せず。パワーステアリングの配線をリセットするなどし、再始動までに2分を失う痛いトラブル。
その間に首位に浮上したマガラエスも、ファビアのシーケンシャルシフターに不具合が生じ、ギヤセレクトが不規則となる。また、ワイパーの不動、スタートのエンジンマネジメント機能停止など、電装系のトラブルが次々と襲いかかり、この日3つ目のステージを終えるまでに首位陥落。これでカエタノヴィッチが労せずしてラリー・リーダーに躍り出た。
そのまま残る3つのSSすべてでベストタイムをマークしたカエタノヴィッチが、2016年のアクロポリスで喫したロールオーバーの雪辱を晴らす今季初勝利。
カエタノヴィッチはこのラリーの直前、テストでのクラッシュによって負傷欠場となっていた第2戦勝者のアレクセイ・ルキヤナクのネームステッカーを貼ったマシンで、アクロポリスのポディウムに上がった。
「素晴らしいフィーリングだった。僕らを信じてくれたみんなに感謝したい。マシンにも、肉体的にも、それと精神的にも、これまでのキャリアで最も難しいラリーのひとつだったけれど、同時に最高にクレイジーで美しいラリーだった」とカエタノヴィッチ。
2位には電気系トラブルを抱えたマシンをなんとかフィニッシュまで運んだマガラエスが入り、選手権ポイントでカエタノヴィッチを21ポイント突き放して首位に立った。
ERCヨーロピアン・ラリー選手権の第4戦は、6月17~18日に同じく地中海に浮かぶ島国キプロスを舞台に開催。首都ニコシアを中心とした市街地とグラベルステージが待ち受ける。