JR東日本は6月6日、山手線の全車両に防犯カメラを設置すると発表した。2018年の春から設置を開始し、2020年までには設置を完了させる予定だ。
防犯カメラの設置は、痴漢の抑止や冤罪の防止にどのくらい役立つのか。落合洋司弁護士は、「満員電車の中での痴漢行為をどこまで撮影できるのか疑問は残る。しかし一定の抑止力にはなるし、証拠としても利用できるだろう」と語った。
「痴漢にもいろいろいる。座席で眠っている女性を触る痴漢には有効」
防犯カメラが設置されるのは、車両ドア上部の電光掲示板の横。1両につき、左右それぞれ2か所づつ、計4台を設置する。これで車内全体を録画できるという。
運行中は常に録画し、映像は数日程度で上書きされていく。「カメラが作動中であることを表示するステッカー」を貼り、乗客にも録画中であることをわかるようにする予定だ。
JR東日本の担当者は、「痴漢防止とテロ対策につなげたい」と語った。
「山手線は特に利用客が多い路線です。防犯カメラ設置は、車内の犯罪行為や痴漢などの迷惑行為防止に役立つと思います。車内の安全性を向上させることで、安心につなげていきたいです。また2020年には東京五輪とパラリンピックが開催されますので、テロを未然に抑止できればよいと思います」
防犯カメラの導入について、落合洋司弁護士は次のように語った。
「痴漢にもいろいろな痴漢がいます。空いた車内で眠っている女性に触るというような痴漢にとってはかなりの抑止力になるでしょう。
しかし痴漢で最も多いのは、満員電車で人が密着した状態で女性のお尻を触るような痴漢です。こうした行為をドア上部の防犯カメラでとらえることはできるのでしょうか。もちろん一定の抑止効果はあると思います」
「不審な動きや痴漢をしているような動きをしていないかはわかる」
また、痴漢行為そのものを撮影することはできなくても、証拠として活用できそうだと指摘する。
「直接、手の動きを撮影できなくても、客観的な位置関係の証拠にはなると思います。被害にあった女性がどこにいて、痴漢の嫌疑をかけられた人がどこにいたかはわかりますよね。もちろん立ち位置だけで全てが決まるわけではありません。女性の後ろの後ろに痴漢がいるようなこともありますからね。女性のすぐ後ろが痴漢だとは限らないんです。その辺りは個別に判断していくしかないでしょう。
立ち位置だけでなく、不審な動きをしていないか、痴漢を疑われるような動きをしていないかという証拠にもなるでしょうね」
警視庁の「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」によると、過半数の痴漢は左右のドアとドアの間で発生している。特にドアの端の手すりのある隅の部分での発生が多いという。カメラがドアの上の部分に設置されれば、一定の防止効果は期待できるだろう。