飛び込み自殺が多いことで知られているJR新小岩駅(東京都葛飾区)。昨年末にはホームドアの設置が決まったが、それまでは警備員が手動でロープを張って人身事故を防いでいるという。
記者が新小岩駅を訪れた6月5日午前、総武線快速のホームには10人もの警備員が配置されていた。快速電車がホームに到着する度に、黄色い線の内側に下がるよう乗客に呼びかけている。
そして、成田エクスプレスやしおさいといった特急列車が通過する時には、警備員が手動でロープを張る。ロープはホーム上の柱に設置されており、特急通過前にそれをつなげて人が線路に近づけないようにする。特急が通過したらロープをすぐに片づける。
駅の各所に貼り紙「あの人この人に支えられ今を生かされ生きている」
JR東日本・千葉支社の広報担当者によると、今年3月からロープを使った安全対策を実施している。
「一部の特急列車が通過するときだけ、注意喚起のためにロープを張っています。人身事故対策でもあります。特急列車の速度を落とすのは難しいのでこうした対策をしています」
時刻表で確認したところ、新小岩駅を通過する成田エクスプレスは上下線合わせて平日で1日90本。少なくとも1日90回はロープを張って片づけるということを繰り返していることになる。
東洋経済の「全国521駅『10年累計鉄道自殺数』ランキング」によると、新小岩駅では過去10年に30件の飛び込み自殺が発生している。JR西八王子駅、JR桶川駅、JR川崎駅に次いで全国で4番目に多い。
同駅では、人身事故を防ぐための様々な対策を講じてきた。2012年には、ホームの屋根の一部の素材を変えて、青い光が差し込むようにした。広報担当者は「青い光は、心理学的にも心が落ち着くとされています。人身事故防止のために、ホームに青い光がさすようにしました」という。
時刻表の横にも「あの人この人に支えられ今を生かされ生きている」「隣に立った知らない人もきっとどこかで繋がっている」など自殺予防のためと思われる紙がいくつも張り出されている
「ホームドアは人身事故対策とは無関係。国交省の目標に則って行う」
しかし、こうした対策も虚しく、同駅での人身事故が絶えることはなかった。そうした中、昨年末にはとうとうホームドアの設置が決定した。ただこれは人身事故対策とは関係がないと広報担当者は語る。
「国土交通省は、2020年までに10万人以上の人が乗り降りする駅にホームドアを設置するという目標を掲げています。新小岩駅ではちょうど南北自由通路の工事が行われているところでしたから、ホームドアの設置も併せて行うことになりました。人身事故対策とは関係がありません。すでに工事は始まっており、ホームの強度を保つための工事が進んでいます」
同駅に張り出されたポスターには、
「お客さまの列車との接触事故や線路への転落事故を防止する対策として、山手線等へのホームドア整備を進めています」
「新小岩駅においても、(中略)総武快速線ホームへのホームドア導入に関する設計を進めてきましたが、このたび、工事に着手することになりました」
とあり、2018年度内の使用開始を予定しているという。国交省の目標を前倒しで完成させるということだ。