青木孝行(ケーエムエスフェニックス86) TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceの第3戦が富士スピードウェイを舞台に、6月3~4日に開催され、プロフェッショナルシリーズでは佐々木雅弘(小倉クラッチREVO86BS)がポールポジションを奪ったが、青木孝行(ケーエムエスフェニックス86)が逆転で2連勝。クラブマンシリーズでは庄司雄磨(OTG AREA 86)が初優勝を飾っている。
ある意味、富士スピードウェイは86/BRZ Raceにとって主戦場ということもあり、特にプロフェッショナルクラスの予選は超激戦。なんとポールシッターから1秒の間に26人が並ぶこととなった。
そのなかで最速タイムを記したのは、開幕戦のウイナーでもある佐々木雅弘(小倉クラッチREVO86BS)だった。序盤のうちにトップに立っていた蒲生尚弥(トミカネッツ兵庫BS86B)を、コンマ028秒という超僅差で上回った。
「今日は(気温と路面)温度がかなり高くなったから、そんなにタイムは出ないだろうと思っていて、僕は後半にアタックしたんですが、先にトップに立っていた蒲生のタイムを見たら、案の定。出て行ってすぐの1コーナーで滑るんだろうなという予想が当たっていたのがすぐ分かったので、極力タイヤを横方向で使わず、縦方向のトラクションで稼ごうと走りを切り替えたのが正解でした」と佐々木。
「昨日はブレーキのトラブルで全然行けてなかったから、予選の前に全部(ブレーキを)ニューにして。本当はあたりとかチェックしたかったけど、できなかったから全部信じて。だから、タイム的にはもう少し……という気持ちはあるけど、トップを獲れたからよしとします」
「僕としては、『つまらない、ひとりだけ逃げやがって』って言われるようなレースをしたいんですが、そうはいかないでしょうね」
ターゲットにされた蒲生は、「昨日とはコンディションが全然違っていたので、これは攻めて走れないなと思って、それなりに抑えて走りました。まわりとは僅差なので、明日はどうなるか……」と本音をポツリ。
なお、3番手は近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC86R)が獲得し、山田英二(CUSCO 86 BS)、服部尚貴(OTG DL 86)、そして前回のウイナーでもある青木孝行(ケーエムエスフェニックス86)までは佐々木との差がコンマ2秒を切っていた。
一方、クラブマンシリーズでは、幻のコースレコード更新となった。ポイントリーダーで2組トップだった小野田貴俊(東埼玉ワコーズED86)が、4輪脱輪で当該タイムが抹消され、なんと最下位に沈んでしまったのだ。そのため、決勝Bレースに挑まざるを得ず……。
これにより、ポールポジションを獲得したのは前回のウィナーで、2組トップだった菱井將文(CUSCO 86 BS)。その脇には繰り上がって1組トップになった橋本洋平(カーウォッチBS 86 REVO)が並ぶこととなった。
「自分で想像していたよりコンマ1~2秒速いタイムが出たほど、納得のタイム。決勝では後ろを見ません! このまま逃げます(笑)」と菱井。
そして、橋本は「後期型はギヤ比の関係で、セクター3だけでコンマ3秒ぐらい損しちゃうんですが、こうして上がれたからには、決勝でも流れを生かします」と語っていた。なお、2列目からは神谷裕幸(N中部ミッドレススノコ86)と庄司優磨(OTG AREA 86)が、スタートを切ることとなった。
■プロクラス決勝は最終ラップに逆転。コンマ4秒差でチェッカーへ
さて、決勝だが、プロフェッショナルクラスは佐々木の願望とは裏腹に、つまらないレースとはならなかった。スタートを決めて1コーナーにトップで飛び込んだ佐々木ながら、蒲生と近藤、そしてオープニングラップのうちにふたつ順位を上げていた青木が食らいついて離れなかったからだ。
上位陣は早々に後続を引き離してトップグループを形成、2周目までは順位変動なし。そのまま周回が進んでいくかと思われたが、その予想はすぐに崩される。
まず4周目の最終コーナーで青木が3番手に浮上し、抜かれた近藤は直後にコースアウト。なんとか4番手には踏み留まる。そして、5周目の1コーナーでは蒲生が佐々木を抜いてトップ浮上。この時すでに佐々木はABSにトラブルを抱え、思うようにペースが上がらなくなっていた。6周目には、やはり1コーナーで佐々木は青木の先行も許す。
その間に、いったんは1秒のリードを築いた蒲生が、そのまま逃げ切るものと思われたが、「僕もそう思っていたんですが、いろいろちょっとありまして。タイヤではないんですが……」とペースが鈍り始め、徐々に青木が差を詰めてくる。
9周目の最終コーナーで青木は蒲生のインを刺すが、ここでの逆転は許されず。だが、これがロスにならなかった青木は最終ラップの1コーナーで蒲生の横に並び、続くコカコーラコーナーで待望のトップに躍り出る。もちろん、遅れることなく蒲生も続いたものの、最後の直線でコンマ4秒だけ届かなかった。
「予選は6番手だったけど、それはダンロップコーナーでブレーキをロックさせてしまったからで、理由は明らかだったし、タイム差もなかったから、まったく勝てないとは思っていませんでした。思っていた以上に決勝のペースは良かったし、何よりスタートを決めてトップグループの中に入ったことが、いちばんの勝因ですね。この連勝は、きっと大きいと思います」と青木。ランキングでも佐々木を抜いてトップに立つこととなった。
一方、その佐々木は3位で、4位は近藤。これに山田、服部の順で続き、7位は予選10番手だった小河諒(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)が、そして8位は坪井翔(ネッツ東埼玉・ワコーズED86)が獲得した。
クラブマンシリーズもまたトップは、そのまま逃げ切ることを許されなかった。ポールシッターの菱井は1コーナーへのホールショットを決めるも、橋本が、そしてヘアピンで神谷を抜いた庄司がピタリと背後に。神谷はセカンドグループに飲み込まれ、その後は徐々に順位を落としてしまう。
3台によるトップ争いで、もっとも積極的に動いていたのが庄司だった。2周目のダンロップコーナーで橋本をけん制。この周は逆転ならなかったものの、4周目には前に出ることに成功する。
その間に1秒1の差をつけていた菱井ながら、勢いに乗る庄司は徐々に差を詰めていく。そして6周目の最終コーナーで菱井のインを刺し、ついに庄司はトップにも浮上! 菱井は次の周、やはり最終コーナーで橋本にもかわされ、「インを開けすぎだった」とレース後に悔やむことしきり。
庄司は橋本の追撃を最後までかわして、嬉しい初優勝を飾ることとなった。
「表彰台に上がるのも初めてなので、今は最高の気分です。練習走行から今回はすごく調子が良くて、予選も(ライバルに)引っかからなかったら、きっと僕がポールを獲っていたと思います。そのぐらいでしたから、チャンスがあれば、いつどこでも行こうと。まさにそのとおりの展開になりました。これから師匠の吉本大樹さんに優勝の報告をして、喜んでもらおうと思っています!」と庄司。
2位は橋本で、3位の菱井は、これで待望のランキングトップにも躍り出た。4位は松井宏太(ネッツ青森アップルRC86)、5位は大久保仁(Forceネッツ東埼玉86)が獲得。
一方、Bレース最後尾となった小野田だが、フォーメイションラップでピットに入り、十分に間合いを保った2周目にレコードタイムを改めて更新。存在感を大いに示した。