トップへ

『13の理由』大ヒットが一因!? Netflix、オリジナル番組“打ち切り強化宣言”にファン悲鳴

2017年06月05日 16:03  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 Netflixによる、オリジナル番組の容赦ない打ち切りが話題となっている。


参考:『13の理由』が“自殺を美化するドラマ”じゃない理由


 まずは5月下旬、『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督が初めてテレビドラマを手がけたことで話題を集めた『ゲットダウン』の打ち切りが発表になった。1970年代後半のニューヨークを舞台に、ヒップホップの誕生を描いた同作は、Netflixのオリジナル番組で初めてシーズン1(パート1&パート2)で打ち切りになってしまうという不名誉な歴史を作ってしまった。ラーマン監督はファンに打ち切りの理由は自分にあるとFacebookで説明している。「『ゲットダウン』を作り続ける場合、映画製作に戻るのに2年もかかる。僕を半分に分けて、ドラマと映画、どちらも製作できればいいんだけどそれは無理だ。でも、これだけは確かなこと。僕は映画を作る人間なんだ」と映画製作を優先することを決意したそうだ。


 しかし、『Variety』誌は、『ゲットダウン』が配信から31日間でアメリカ国内の視聴者数(18歳~49歳)を320万人しか集められなかったことが、打ち切りの主たる原因だと見ている。この数は、Netflixの人気番組『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』シーズン4と同条件で比較するとたった5分の1だという。13話で132億円の莫大な製作費用に見合わない結果であるのは明らかだった。


 続いて、先日打ち切りが発表された『センス8』は、ある日突然、遠く離れた場所にいながらお互いの感覚や感情を共有できるようになった8人が織りなす新感覚SFドラマ。ラーマン監督同様、今まで映画界を中心に活躍してきたラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹が初めてテレビ界に進出し、製作総指揮、監督、脚本に携わった作品だ。5月5日からシーズン2が配信開始になったばかりで、1ヶ月経たずしての突然の打ち切り宣言に、ファンは動揺しきり。すでに計23話も『センス8』の世界にどっぷり浸かり、さらなる展開に胸を躍らせていたからである。


 海外ドラマは様々な事情から“きれいな”終わり方をしないことがよくあるが、それにしてもなぜNetflixはシーズン2の配信からここまで短期間で『センス8』に見切りをつけたのか。NetflixのCEOリード・ヘイスティングスは、「CNBC」とのインタビューでこれら2作品以外にもどんどん打ち切りをしていきたいという驚きの意欲を語っている。その理由は、「いつもコンテンツチームに言っているんだ。『もっとリスクを負わなきゃ。もっとクレイジーなことにトライすべきだよ』とね。打ち切り率を上げたいんだ。そうする(リスクを取る)ことで、本当に信じられないような勝者が現れる。『13の理由』みたいなね。この3ヶ月で『13の理由』はとんでもないヒットを放った。驚かされたよ。良い番組ではあるけど、こんなにも人気が出るだなんて予想していなかったから」とのこと。視聴者数を獲得できない番組は早々に切り捨て、ヒット番組に予算を費やし、クオリティーを高めるのが狙いらしい。


 『センス8』でシカゴの警察官ウィルを演じたブライアン・J・スミスは、打ち切りに落ち込んでいるキャストの1人だ。ファンにツイッターで「声を上げることが必要!」と呼び掛けたことで、「#RenewSense8」(「#センス8の更新を」)のタグを付けて打ち切りの撤回を叫ぶファンが続出。Netflixと同じくオリジナル作品の製作に力を入れるAmazonに引き継いで欲しいと懇願する声も上がった。その後、スミスは「君たちが戦ってくれたことは僕らの心に響いたよ。でも、十分な数の視聴者を集められなかったし、製作するにはとてつもない費用がかかるんだ」とツイートしている。確かに、登場人物の8人が暮らすそれぞれの国や移動先での撮影費用(13カ国16都市!)、8人の主役に加え、ダリル・ハンナや『LOST』のナヴィーン・アンドリュースのギャラだけでも相当な費用がかかることは想像に難くない。


 男性から女性へと性転換し、その後女性と愛し合うという難役のノミ役がハマっていたジェイミー・クレイトンは「『センス8』はあなたの中で生き続けるわ。それぞれのため、この美しい世界のために、愛し、訪ね、学び、人を助け、闘うの」と『センス8』のキャラクターが劇中で見せてきた行いをもとに、ファンへ心境を伝えた。


 これからも積極的に打ち切るとヘイスティングスが語っているように、2作品以外のファンにもショックな続報が迫りつつあるかもしれない。『13の理由』の大ヒットは、SNSでの口コミ効果が絶大であった。お気に入りの作品を続けてもらうためには、ファン自らが宣伝マンとなり、視聴者を増やすことが要求される時代なのかもしれない。(賀来比呂美)