政府は2018年度の企業の有給取得日数を、前年度より3日増やすよう促していく方針を固めた。6月5日の読売新聞が報じている。
厚労省が2016年に実施した就労条件総合調査によると、2015年の有給平均取得日数は8.8日だった。しかし、「そもそも1日も消化できていない」といった声もあるように、取得すらままならない人もいるようだ。同年の取得率は48.7%と、半分以上の人は取得できていないことが明らかにされている。
休めない理由1位「みんなに迷惑がかかるから」 職場の雰囲気改善も重要
有給取得推進が思うように進まないのは、企業がハード・ソフト両面で問題を抱えているためだ。
ハード面では、有給休暇制度の柔軟な活用が出来ていない。厚労省の2016年の調査によると、有給休暇の時間単位取得制度を設けているのは全体の16.8%。約8割の会社では有給休暇を分割して取ることができていないことになる。こうした使い勝手の悪さは、取得日数を押し下げる一因にもなる。
職場の雰囲気も大きなハードルになっている。同省の2014年の別の調査では、3分の2の労働者が「年次有給休暇取得にためらいがある」と答え、その理由は多い順に「みんなに迷惑がかかるから」(74.2%)、「後で多忙になるから」(44.3%)、「職場の雰囲気で取得しづらいから」(30.7%)となっていた。取得したくても、職場の雰囲気や休んだ後の仕事量を思うと躊躇ってしまう、という人が多いようだ。
有給取得率を上げるなら、柔軟な制度設計と取得しやすい雰囲気づくりが欠かせないようだが、後者は長年指摘されていても、大きく改善している様子は見られない。
休める人とそうでない人の差がさらに開く可能性も
政府はプレミアムフライデーに合わせ、月末金曜日に有休を取得できるよう企業に働きかけていく予定だというが、そもそもプレミアムフライデーを実施していなかったり、実施しても実態は通常業務時と変わらない企業も多く、効果は限定的だと思われる。
また、有休取得を増やした企業に講じることが検討されている助成優遇措置には、「これまで有休を取れるよう努力してきた会社はどうなるのか」といった不満も聞かれる。確かに、今まで企業努力を重ねてこなかった会社のほうが得をするようでは本末転倒だ。
取得日数を3日増やすよう促しても、今取得できている人たちがさらに取れるだけで、取得できていない人たちの状況はあまり変わらないことも予測される。取得できていない人たちが平均日数程度休めるよう、工夫していく必要もあるのではないだろうか。