ダブルヘッダーのデトロイト戦2レース目となる第8戦は、佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)の目の覚めるようなポールポジション奪取劇から始まった。
昨日のマシンセッティングに不満の残る琢磨は昨晩遅く、さらにレース当日の朝まで侃侃諤諤の討論をエンジニアとしたという。エンジニアと意見が分かれたセッティングではあったが、琢磨は予選ひと組目のライアン・ハンター-レイの無線ラジオでコース状況とマシンの状態を聞き、ふた組目の予選に登場。
雨が今にも落ちそうな状況のなか、はじめからレッドタイヤを選択し、最初のアタックを敢行。一度ピットに戻った後に、再び残りのレッドタイヤを投入し、タイムアタック。最後の最後、セッション終了間際に1分13秒6732のタイムをマークしてPPとなった。琢磨のポールポジションは、2014年のデトロイト以来丸3年ぶりとなる。
終日雨予報だった日曜も、午後には快晴となりドライでのスタートとなった。フロントローの隣にはハンター-レイ。アンドレッティのチームメイト同士が並んでスタートすることに。
「セナプロじゃないけど(笑)、ターン1に先に入った方がリードするって、ライアンと決めておいたんです」という琢磨が、トップを守りレースをリードする。
その後ハンター-レイのペースが落ち、グラハム・レイホール、ウィル・パワーが順位を上げてきた。琢磨はレイホールを抑えつつ最初のピットインまでトップを守り、23周目にピットイン。その次の周にレイホールがピットインするが、レイホールが琢磨の前に出るかたちとなった。
今度は琢磨が追う番だが、レイホールのペースが速く、さらには周回遅れも挟まって、琢磨はリードを広げられてしまう。二度目のピットインでは真後ろにいたパワーにも前に出られてしまい4位に後退。
パワーの前には3ピット作戦を敢行していたジョセフ・ニューガーデンでシークエンスを変えてペースを上げることで、上位進出を果たした。
「僕のクルマというか、ホンダ勢はみんなそうだと思うんですけど、前のマシンの直後に入るとダウンフォースのバランスが悪くなって、なかなか抜けないんですよね。プッシュ・トゥ・パスを使って抜いたりしましたけど、厳しいレースでした」
残り5周となったストレートでジェームズ・ヒンチクリフ、スペンサー・ピゴットがエンジンブローでマシンを止めたために赤旗でレースが中断。残り周回2周でリスタートしたが、琢磨はプッシュ・トゥ・パスも残り少なく、上位のマシンを捕らえる余力も無かった。
ここで真価を発揮したのはレイホール。シボレーの地元デトロイトでの2連勝は痛快だったろう。素晴らしいスピードのマシンだった。レイホールと琢磨を除けば、2位ニューガーデン、3位パワー、5位パジェノーとペンスキー勢の勢いが目立つレース2となった。
「今日はやれるだけのことはやったから、4位でも仕方ないと思います。グラハムは今日も本当に速かった。最後の赤旗の後も残念だけど追い上げる力が残ってなかったですね」
「でも2レースともトップ10内でフィニッシュできたし、先週のインディ500からの忙しいスケジュールの中で、うまく2レースの週末を終えられたんじゃないかと思います。すぐにまたテキサスのレースが来ますけど、また頑張りますよ!」
汗だくのレーシングスーツのまま笑いながら琢磨は言った。