2017年06月05日 10:13 弁護士ドットコム
「上司に『退職させてください』とLINE、これだけで退職したことになるのでしょうか?」。ネットのQ&Aサイトに、そのような投稿がありました。
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投稿者は5月前半に上司に伝えて、6月1日からは新たな職場で働くことが決まっているため、6月になっても前の会社に在籍したままになっていたら困るそうです。
LINEで退職の意思表示さえすれば、退職届を出さなくても退職することができるのでしょうか。太田伸二弁護士に聞きました。
契約期間の定めのない労働契約の場合、退職希望日の2週間より前に、退職の意思を会社に伝えていれば退職することができます。
この「退職の意思」の伝え方に法律上の制限はありません。ですから、LINEを通じてであっても、退職の意思の伝え方としては有効です。ただ、「退職の意思表示は書面を提出して行うこと」という趣旨の規定を置いている就業規則を有効とした判決もあります。そのため、こういった就業規則がある場合、LINEだけで退職の意思表示をすることには、最終的に退職が認められないリスクが伴います。
また、LINEの場合、携帯電話の操作ミスなどでやり取りが消えてしまうことがあります。そうなると、退職の意思表示をしたかどうかが会社との間で争いになった場合、意思表示をしたことの証拠がなくなってしまいます。
退職の意思表示は重要なものです。会社に対して退職の意思を伝えたことを形として残すためにも、書面で「退職届」を出した方が確実です。
なお、会社側としても、今回のケースのように、LINEや口頭で退職の意思を伝えられた場合には、後日の争いを無くすため、退職するものとして扱うことを内容証明郵便などで伝えた方が良いと考えます。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
太田 伸二(おおた・しんじ)弁護士
2009年弁護士登録(仙台弁護士会所属)。ブラック企業対策仙台弁護団事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団全国常任幹事。
事務所名:新里・鈴木法律事務所