土日にレースを行うダブルヘッダーで開催されたインディカー・デトロイト戦。4日に行われた第8戦となるレース2は、グラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン)が速さを見せて連勝を飾った。ポールからスタートした佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は4位でレースを終えた。
雨は朝まで残った。しかし、4日に行われたレース2の予選と決勝レースは今日も快晴に恵まれた。
予選ではグループ1はカルロス・ムニョス(AJ・フォイト)のクラッシュにより走行時間が大幅短縮され、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)がトップタイムをマークした。
グループ2は12分間フルに争われ、ブラックタイヤで連続アタックを行ったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がトップを保ったが、計測時間終了前になって一気に路面コンディションが向上。
佐藤琢磨が1分13秒8604という昨日樹立されたコースレコードを破ってトップに躍り出た。ところが、その直後にグラハム・レイホールが1分13秒8105で逆転。これをさらに琢磨が1分16秒6732で上回り、今シーズン初、2014年のデトロイト戦レース2以来となるキャリア6回目のポールポジションをコースレコードとともに獲得した。レイホールの最後のアタックは、1分13秒8392。前のラップの自己ベストを僅かに下回った。
グループ2の琢磨の方がグループ1でトップだったハンター-レイより速かったので、グループ2がグリッドのイン側につき、レースのスタートは切られた。
琢磨の横はチームメイトのハンター-レイ。同じチームで戦うようになって互いの能力を認め合うようになっているふたりは、フェアに勝負をすることを約束していた。
ポールシッターの権限として琢磨が加速で先手を打つと、ハンター-レイは琢磨の背後に回って2番手キープで序盤を戦う作戦を採った。琢磨はユーズド、ハンター-レイは新品のレッドタイヤを装着してスタート。ハンター-レイが前に出たらパスするのは難しかったかもしれない。
琢磨は23周目に最初のピットストップを行うまでトップを守った。しかし、2番手に浮上していたレイホールは1周多く走り、ピット作業を終えると琢磨の前でコースに戻った。トップで走った1ラップ、ピットでの作業時間、両方でレイホール陣営が速く、3秒もの差がついた。
レース1と同じくジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が9周目という早いタイミングでピットストップを行った。3ストップで2ストップ勢を打ち負かそうという作戦だ。
昨日のレース1では10周でピットに入って4位フィニッシュに終わった作戦だが、スタートからイエローコーションの出なかった今日のレース2では9周でピット。ブラックに履き替えると超速ラップを重ねて行った。
しかし、レイホールは昨日のレース1以上の速さを実現しており、レースの折り返し点で2番手の琢磨に13秒近い大差をつけていた。最後のピットストップで琢磨はパワーに抜かれ、ニューガーデンは47周目に他の上位陣より1回多い3回目のピットストップに滑り込み、それを終えてコースに戻ると2位をキープしていた。
ゴール目前、ジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)とスペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)の2台が同時にエンジンのトラブルでコース上にストップ。オイルや水が出たためにイエローフラッグから赤旗となり、20分間の中断があった。
この直前にレイホールとニューガーデンの差は6秒まで縮まっていたが、それは優勝をほぼ確定させていたレイホールがペースを落としていたからだ。それが、このレッドフラッグで差がほぼゼロになってしまった。
しかし、レイホールの強さは揺るがなかった。リスタートでニューガーデンを突き放し、アタックするチャンスを一度も与えることなく、2周で1.1772秒の差をつけてゴールした。デトロイトのダブルヘッダー完全制覇だ。ダブルヘッダーの2レースを勝利するのは2013年のトロントでのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)以来だ。
3位はパワー。レース1ではレイホールに周回遅れにされたが、今日は表彰台に上った。シボレーはイベントスポンサーで、レースのプロモーターはロジャー・ペンスキー。2レースとも優勝を逃したが、ニューガーデンとパワー、ふたりのチーム・ペンスキー・ドライバーがレース2では表彰台に上り、意地を見せた。
琢磨は4位。レース1は予選4位から8位、レース2はPPだったが表彰台を逃す4位。アンドレッティ・オートスポートは予選ではコンテンダーだったが、レースで苦戦していた。同じホンダエンジン、ホンダエアロで戦うレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに追いつき、追い越すことが今シーズン中にできるだろうか。
それでも琢磨はデトロイトの2レース両方でトップ10位りし、ランキング3位をキープ。しかも、ポイントリーダーのディクソンがレース2は6位と琢磨より後方だったため、ポイント差は11点しかない。シリーズ2位のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)との差は僅かに4点だ。
「とても良い週末になった。ファンもたくさん見に来てくれていた。天気が2日間とも良かったことにも感謝した。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング全体の勝利だ。彼らのことを本当に誇りに感じているよ」
「デトロイトのダブルヘッダー2レース両方で勝ったのは今日の我々が初めて。特別な1日になった。最後の2ラップを前にして赤旗が出されたが、抜かれることは心配していなかった」とレイホールは喜んでいた。
レイホールは今年2勝目を挙げる最初のドライバーとなった。マニュファクチャラー別勝利は、ホンダが3連勝で今シーズンのトータルを5勝に伸ばした。シボレーは3勝。昨シーズンは2勝だったホンダだが、デトロイトでは1-2-3フィニッシュもレース1で達成した。ポールポジションはシボレーが開幕5戦で連取したが、インディ500からはホンダが3戦連続での獲得となっている。
表彰台を逃す結果となった琢磨は、「ポールからのスタートだったのだから、表彰台には上がりたかったですね。今日もレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが速かった」
「グラハムに1回目のピットで抜かれ、パワーに2回目のピットでギリギリ抜かれた。あれは悔しかった。自分たちは前のマシンに1.5秒ぐらいまで近づくとハンドリングが悪くなっていた。それを何とかしないとならないし、レースでのペースももっと速くする必要がある」とデトロイトでの戦況を分析していた。