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志尊淳は超ハイスペックな“ヒロイン”? 『帝一の國』補佐役の愛嬌

2017年06月05日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 若手イケメン俳優が勢揃いし、公開から1ヶ月が経った現在もサプライズヒットを飛ばし続けている『帝一の國』。菅田将暉演じる主人公・赤場帝一をはじめ、ほとんどのメインキャラクターがトップに立とうと躍起になる中で、ひとりだけ補佐役としてのポジションを堅守し続ける異色の存在が、志尊淳演じる榊原光明だ。


参考:影の王子・千葉雄大、年齢不詳な役柄が似合うワケ 『帝一の國』で見せたポテンシャルの高さ


 赤羽帝一の右腕として、盗聴器など様々な発明品で敵陣の動きを見極める。さながら“こうめい”の名に違わない、巧みな策の数々で帝一の野望を後押しする極めて重要な存在である。しかも、帝一がクールでクレバーに振る舞い、男らしい雰囲気を作り上げようとするのに対して、光明は忠実な飼い猫のように可愛らしく、愛嬌たっぷりに甘え続ける。このふたりのギャップが好対照となることで、若手イケメン俳優たちのアンサンブルにメリハリが与えられているのだ。


 そんな愛嬌の数々で、出番の少ない正ヒロインの美美子を演じる永野芽郁を凌駕し、まんまと今作のヒロインポジションを奪い去ってしまうのだから恐るべし。それでいて、縁の下の力持ちとして活躍する光明の姿は、かえって帝一が目指す男らしさ以上に、クレバーで格好良く映るのだから不思議なものだ。


 そんな光明を演じる志尊といえば、いわゆる“イケメン俳優の登竜門”と呼ばれるものをすべてくぐり抜けてきた、超ハイスペックな逸材なのである。元祖イケメン俳優集団として、城田優や瀬戸康史を輩出してきたワタナベエンターテインメントの「D-BOYS」に所属し、斎藤工から古川雄大など多くの人気俳優を作り上げた『テニスの王子様』のミュージカル、通称“テニミュ”に出演。


 そして、イケメン俳優ブームの火付け役でもある日曜朝の特撮シリーズへと華麗にステップアップしてきたのだ。今回の『帝一の國』の共演陣で見てみれば、志尊は『列車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系/東映)、千葉雄大は『天装戦隊ゴセイジャー』(テレビ朝日系/東映)。そして菅田が『仮面ライダーW』(テレビ朝日系/東映)で、竹内涼真は『仮面ライダードライブ』と、この特撮シリーズが、現在でもイケメン俳優の登竜門としてしっかりと機能していることがよく分かる。


 彼が演じてきた役柄の数々は、そのハイスペックさを振りかざす高癪さなどは一切見せず、今回の光明と同様に無邪気に笑う人懐っこい役柄や、なんだか頼りない一面を見せるものばかり。それでも“イケメンの無駄遣い”にならず、少女漫画に登場するような典型的王子様像を見せてくれるのは、そのルックスの造形の完璧さと、喋り方や声質の甘さを巧みに使いこなしているからだろう。


 一昨年のTBS系ドラマ『表参道高校合唱部!』での病弱な美少年という儚げなキャラ設定も、映画『先輩と彼女』の時の少しキザな先輩役もサマになれば、一方で昨年放送された日テレ系ドラマ『そして、誰もいなくなった』での二面性を持ったミステリアスな役柄もこなす。そんな中、現在放送中のフジテレビ系深夜枠のドラマ『きみはペット』では、かつて松本潤やチャン・グンソクが演じてきた役柄に抜擢。最高級に持ち前の愛嬌を見せつけ、前のふたりと比べても圧倒的に“ペット”感が増している。


 さらに、最近では雰囲気の魅力だけではなく、俳優としての実力も着実に身につけてきているのだ。先日上演されていた舞台『春のめざめ』で、彼は主人公のメルヒオールを熱演して見せた。思春期の少年の性の意識や、大人への反抗心を描き出したドイツの戯曲を翻案した同作で、抑圧され続けた感情を飼い慣らせないでいる難しい役を演じきったのである。同作で彼のスペックがまた一段階上がったことは間違いない。


 この秋には映画『覆面系ノイズ』が公開される。彼が演じるのは、バンドのメンバーの杠花奏(ゆずりはかなで)。180cm近くの背丈の志尊には、低身長を気にして牛乳を飲みまくるという原作のキャラクター設定は当てはまらないものの、その中性的な魅力を遺憾なく発揮してくれるはずだ。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。