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「早稲田のゴッドハンド」摘発…整骨院水増し請求、話に乗った患者側も罪に問われる?

2017年06月04日 09:54  弁護士ドットコム

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「早稲田のゴッドハンド」摘発ーー。東京都新宿区の早稲田大学近くの整骨院の元院長(44)が、交通事故でけがをした会社役員と共謀して、けがの治療回数を水増しして保険金など82万円をだまし取った疑いで、警視庁に逮捕された。元院長は「早稲田のゴッドハンド」としてテレビ出演などもしていた。


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5月26日のテレビ朝日やフジテレビの報道によると、元院長は治療に訪れた会社役員に対して、「通院日数が多いほど慰謝料などが多くもらえる」などと持ちかけたという。この会社役員も逮捕されている。


整骨院の治療をめぐる不正請求については、以前から問題になっているが、法的にはどのような点が問題なのだろうか。外口孝久弁護士に聞いた。


●不正請求の話を持ちかけられた側も罪に問われる?

「残念なことに、整骨院が、診療報酬欲しさに患者に水増し請求を持ちかけて結託するケースや、患者の知らないところで水増し請求をするといったケースは、これまでも度々ニュースになっています。」


具体的には、どのような法的問題があるのか。


「行ってもいない施術を受けたことにして保険会社に治療費を請求(以下、『水増し請求』といいます)をすれば、これは『詐欺罪』(刑法246条)に該当する行為です。


保険会社としては、払う必要のない治療費を騙し取られているのですから、先ほど説明した刑事責任のほかに、保険会社から、民事上の責任追及として、詐取した額の返還を求められることは当然です。


また、整骨院では『柔道整復師』という国家資格を持つ者が施術を行いますが、柔道整復師について定めた柔道整復師法においては、『罰金以上の刑に処せられた者や柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者に対しては、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる』(柔道整復師法第4条3号4号、同法8条1項)と定められているので、水増し請求が発覚すれば、最悪の場合、柔道整復師は免許を失うことになります」


話を持ちかけられた患者側も罪に問われるのか。


「不正請求だとわかっていて整骨院の水増し請求を放置すれば(謝礼などを受け取っていればなおのこと)、いわゆる共犯となるため、整骨院側と同様に、詐欺罪に問われることになります。もちろん、患者から話を持ちかけたとしても、整骨院側、患者ともに罪に問われます。」


どのようなことがきっかけで発覚するのか。


「水増し請求は社会問題化していますので、保険会社のチェックも年々厳しくなっているようです。


あまりにも多数回の通院がなされていたり、施術の部位が著しく多かったりするなど、記録上不自然な点があれば、保険会社による調査がなされることもありえると思います。」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
外口 孝久(そとぐち・たかひさ)弁護士
東京弁護士会所属。ベリーベスト法律事務所交通事故部マネージャー。入所以来、交通事故案件・労災案件を継続的に扱い、現在までに担当した件数は150件以上。
事務所名:弁護士法人ベリーベスト法律事務所
事務所URL:https://www.vbest.jp/