6月10日、11日に鈴鹿サーキットで開催されるスーパー耐久第3戦 スーパー耐久シリーズの第3戦は6月10~11日に鈴鹿サーキットを舞台に『SUZUKA“S耐”サバイバル』として開催される。今シーズン初の全クラス混走の4時間耐久レースとして行われ、さらに予選落ちもあるシリーズ前半戦の難関レースだ。
昨年から鈴鹿でのスーパー耐久は、予選と決勝の間に「セカンドチャンス100」を挟むこととなった。これは簡単にいうと敗者復活戦。予選落ちをスーパー耐久として久々に出すこととなったのだ。
ただし、昨年とは少しシステムが変更されている。昨年はST-Xクラスに限り、予選に挑むことで無条件に決勝進出を許されたが今回はその優遇が廃止された。また、予選上位3位までがセカンドチャンス100に出ることなく決勝進出を許されていたが今年はその枠が拡大。セカンドチャンスに挑まなくてはならないのは、予選下位3位のみとなった。
今年から決勝進出台数が45台から50台に増やされた。第3戦鈴鹿の総参戦台数は54台のため、4台が予選落ちとなる。
按分比例によってST-TCRクラス(5台参戦)とST-2クラス(5台参戦)、そして1台のみのST-1クラスは全車決勝進出が許され、残りの4クラスで「セカンドチャンス100」を実施。
それぞれの予選下位3位がセカンドチャンス100にまわり、12台での敗者復活戦を実施。クラス最下位の1台のみが予選落ちとなる。
たかが1台なれど、されど1台……。予選もセカンドチャンス100もトラブルを抱えたり、リタイアしたりすることは絶対に禁物である。
それでも、ここまでのランキング上位陣が順当に予選通過を果たすのでは……と思うかもしれない。しかし、実はもうひとつ重要な要素がある。それは今年から全クラスに採用されたウエイトハンデ制度だ。
1位から3位までST-XクラスとST-1クラスは30kg、20kg、10kg、ST-TCRクラスとST-2クラス、ST-3クラスは20kg、10kg、5kg、そしてST-4クラスとST-5クラスは15kg、10kg、5kgと違いはあるものの、ここまで行われた2戦分が累積されている。
もっともウエイトを積んでいるのはST-Xクラスで開幕2連勝を果たしている1号車スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの内田雄大/藤井誠暢/平峰一貴組で60kg。
ウエイトが大きく影響する鈴鹿では、この重さは大きな影響をもたらす。勝つのはもちろん至難の技だし、ひょっとしたらセカンドチャンス100に回る可能性もないとは言い切れない。ところが、そんな苦境すら、藤井はポジティブにとらえている。
「正直、60kgはすごくきついので、速さは示せないでしょう。苦しい中で、チーム力を増して、2位でも3位でも、できるだけ上位にいくことを目指します。チーム力とはピットであったり、戦略なりで結果を拾える力。今のST-Xクラスは戦い方のレベルがどんどん高くなっているので、こういう時にいかにポイントを稼げるかが重要です」
「仮にセカンドチャンス100に回っても、ロングランのテストにもなるし、ジェントルマンドライバーには走行経験が増えるから、ある意味走っておいてほうがいいかもしれません、ぶつからない前提でね(笑)。クルマの消耗という部分ではマイナスですが、その時間を使ってセットアップもできるかも!」と藤井。
ちなみにST-Xクラスでは、3号車ENDLESS ADVAN GT-RのYUKE TANIGUCHI/山内英輝/元嶋佑弥組も2戦連続2位で40kgを積んでいる。スリーボンド日産自動車大学校GT-Rとの20kgの差がどう影響を及ぼすか、苦しい状況に変わりはないだろうか、その上でどう先着する術をつかむか注目されるところだ。
その一方で、ライバル車両は99号車Y's distraction GTNET GT-Rの植松忠雄/星野一樹/藤波清斗組と8号車ARN Ferrari 488 GT3の永井宏明/佐々木孝太/白石勇樹組が10kg積むだけで、あとはノーハンデ。今回は、絶対に勝たなければならない戦いになるはずだ。
また、ST-Xクラスには、CARGUY ROGER DUBUIS HURACAN GT3が初登場。木村武史と横溝直輝、アフィド・ヤジッドのドライブで、戦いをどう盛り上げてくれるか期待したい。
ST-TCRクラスにも鈴鹿戦から初参戦チームがいる。ここまでホンダ・シビックType-RとアウディRS3 LMSがそれぞれ2台ずつで挑んできたが、今回からフォルクスワーゲン・ゴルフGTIが加わることとなった。
実力は未知数ながら、同じグループの車両ということで、ゴルフはRS3との共通部分が多いという。レース経験数ではヨーロッパのレースに参戦しているゴルフの方が圧倒的に多いこともあり、その活躍に期待したい。
そんなModulo CIVIC TCRの97号車には、WTCCに参戦中の道上龍、そしてシビックインターカップ伝説のドライバー、幸内秀憲が乗り込むことになった。さらに3人目には、Modulo開発アドバイザーを務める「ドリキン」こと土屋圭市が久々のレース参戦に挑む。
WTCCとスーパー耐久では戦い方は違うが、世界のドライバーたちを相手に戦っているベテラン道上がどんな走りを見せてくれるのだろうか? 幸内にとっては久々の国内レースではあるが、昨年はタイで耐久レースを戦い、チャンピオンに輝いている。決勝には強いシビックで揃って渋い走りを見せて欲しいものだ。
今回もST-1クラスは31号車Nissoku Porsche 911 GT3 Cupの小川勝人/影山正美/富田竜一郎組が1台のみ。予選落ちはないものの、激しい競争相手を求めているのは間違いない。また、孤軍奮闘であっても、総合での上位進出をも狙っている。
ST-2クラスでは、昨年同様シリーズを通じて三つ巴の戦いとなりそうだ。ランキングトップは第1戦を2位、第2戦で優勝を飾った59号車DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学/後藤比東至組だ。
第1戦を制した20号車RSオガワADVANランサーの下垣和也/松本武士/近藤説秀組は第2戦でリタイア。そして昨年の鈴鹿ラウンドを制している6号車新菱オート☆DIXCEL EVO Xの冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄組は2戦ともリタイアとレース前半で激しさトップ争いを繰り広げるも結果がついてきていない。
ランキング2位につけるのは7号車サーキットWOLF新菱オートEVO Xの吉田綜一郎/石崎敦士/成澤正人組で、常に手堅いレース運びを見せてきた。ここからは「3強」の戦いに割って入ってくるだろう。
ST-3クラスは第1戦を38号車muta Racing TWS IS350の堀田誠/阪口良平組が制し、連覇に向けて幸先の良いスタートを切った。しかし、第2戦はセーフティカーランのタイミングが悪く、ピットを離れた時にピットレーンエンドでレッドランプが灯る不運に見舞われて勝負権を失ってしまう。
フェアレディZと相性抜群の第2戦SUGOで久々の優勝を飾ったのは、15号車岡部自動車Rn-sチームテツヤZ34の長島正明/田中徹/田中哲也組。
激戦区を物語るかのようにウエイトを積むのは6チームで2戦連続で表彰台に立ったチームはいない。最大でも20kgでこのクラスにはすべてのチームに勝負権がある。
しかし、「このコースは僕らにとって地元だし、前回のレースを取りこぼしてもいるので、今回は絶対に勝ちたいと思っています」と語るのは38号車の阪口。連覇に向けて、連敗など喫するつもりはまったくなさそうだ。
ST-3クラスにはスーパーGTでもお馴染みの本山哲率いる、SKT team motoyama Z34も参戦しており、現在ST-3のランキング4位。本山と同じくスーパーGTに参戦する安田裕信、そして松原怜史の組み合わせで、ここからの巻き返しが期待される。
ST-4クラスは、ST-3クラスとは逆でウエイトを積むのはわずか3チーム。つまり、順位こそ入れ替えているが、同じ3チームが表彰台を続けて獲得している。
ここまで2位、1位と右肩上がりでランキングトップに立つのは、86号車TOM'S SPIRIT 86の松井孝允/蒲生尚弥/坪井翔組。開幕戦を制した93号車SKR ENGINEERING S2000の太田侑弥/佐々木雅弘組が続く一方で、昨年のチャンピオンチーム、13号車ENDLESS ADVAN 86の小河諒/高橋翼/花里祐弥組は未だ優勝を許されていない。
特筆すべくは、前回のレースでSKR ENGINEERING S2000が予選でミッショントラブルを強いられながらも、3位入賞を果たしていることだ。
一時は牙を抜かれた印象もあったS2000ながら、今年から改められたコントロールタイヤとの相性もよく、逆襲の可能性も十分にありそうだ。
「86号車なんか若くて速いドライバーが乗っていて、放っておいたらそのまま行っちゃいそうなので、僕らが必死に抵抗してシリーズを盛り上げないと。太田さんもS2000に長く乗っているスペシャリストだし、やっぱり鈴鹿はホンダ車のファンが多いから、期待に応えてみせますよ」と佐々木は力強く語っていた。
ST-5クラスではFRで絶対のハンドリングの良さを自慢とするロードスター勢が東コースで、クラス随一のパワーを誇るフィット勢が西コースで猛威を振るうことが予想される。
ただし、このクラスは小排気量ゆえウエイトハンデが、もっとも影響を及ぼすと言われている。前回の優勝で20kgを積む88号車村上モータースMAZDAロードスターNDの村上博幸/脇谷猛組や、第1戦を制した700号車J'S RACINGホンダカーズ浜松北ダークみきゃんFITのヒロボン/寺西玲央組も15kgを積んでいるため、苦戦を免れないかもしれない。
今回の主役として名乗り上げてくれそうなのが、ロードスター勢では2号車TEAM221 BOMEX withオートラボND5RCの筒井克彦/山下潤一郎組と、フィット勢ではディフェンディングチャンピオンの69号車J'S RACINGホンダカーズ浜松北みきゃんFITの大野尊久/梅本淳一/山田秀明組だ。とくにみきゃんFITは、ここまでの2戦トラブル続き。悔しい思いを溜め込んでいるだけに、そろそろ爆発させようと、この一戦に賭けているはずだ。
今回のレースはドライバー交代を要するピットストップの義務づけが4時間レースであるにもかかわらず、通常どおり2回というのがポイントのひとつである。
45Lタンクで1回の給油量が20LまでのST-5クラスは、2回で済ますのは九分九厘不可能だろう。
その他のクラスでも、4時間を単純に三分割すると1時間20分となり絶対に無理とは言い難い。
序盤にセーフティカーが長く入れば、燃費も稼げて後の展開を楽にするかもしれないが、むしろ逆のパターンの方がありそうだ。もう少し引っ張りたいタイミングでSCが入り、ロスを最小限にするためドライバー交代を行うという方が効率的だ。
ただ、1回多い分にはドライバー交代の義務づけはない。そこであらかじめ3ストップを予定して1回は給油のみという作戦もあるだろう。各チームのピット戦略にも、是非とも注目してほしい。
さらに、今回の鈴鹿のS耐開催時にこのS耐観戦券を提示することで、6月24~25日に鈴鹿で行われるGTカーレース『Blancpain GT Series Asia』の前売り観戦券が通常の半額の1000円で購入できるという。他にも『Blancpain GT Series Asia』に向けたお得な情報があるので、鈴鹿サーキットの現地でゲットしてもらいたい。