厚生労働省は6月2日、ハローワークを通した障害者の2016年度の就職件数9万3229件と、8年連続で増加したことを発表した。2015年度の9万191件から3.4%伸びており、過去最高を更新している。
就職先の業界は「医療・福祉系」が38%で最多 次いで製造業、卸売・小売業
全体の内訳は、身体障害者が前年度から3.8%減って2万6940件、知的障害者が1.9%増加して2万342件、精神障害者が7.7%増えて4万1367件だった。精神障害者の伸び率の高さが特徴的だ。
身体障害者の就職件数は10年前からほぼ横ばいなのに対し、知的障害者、精神障害者は増加の一途を辿っている。特に精神障害者の就職件数は、10年前の6739件から4万1367件へと急上昇中だ。
厚労省職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課の担当者はこの理由をこう話す。
「身体障害者の方の雇用義務化は1976年と古くから取り組んできたため、ここに来て労働市場が安定してきたのだと思われます。知的・精神障害者の雇用促進に取り組み始めたのは平成に入ってからなので、そうした政策の変化に応じて、今は知的・精神障害者の労働市場が拡大しているのではないかと考えています」
企業はCSRやダイバーシティなどの観点から障害者雇用を促進しているという。従業員数50人以上の企業が、障害者の働きやすさに配慮して設立する「特例子会社」の数は年々増え続けており、2016年には448社と、10年前の約2.3倍を記録した。
「求人が増えたことで、障害者の方の就職意欲も高まっているのだと思われます。行政も助成金やジョブコーチ派遣などで企業の障害者採用を支援していますし、これらが噛み合って8年連続の増加につながったのでしょう」
障害者全体で多い就職先は医療・福祉系で38%、製造業が13.2%、卸売・小売業が12.4%と続く。各障害種別で見ても傾向は同様だ。
職種別に見ると、知的障害者・精神障害者は「運搬・清掃・包装等の職業」に就く割合がそれぞれ48.4%、35.6%と最も高く、身体障害者は「事務的職業」の割合が26.3%と最多だった。
次の課題は定着支援 就職した精神障害者のうち半数が1年以内に離職
障害者の就職件数向上は喜ばしいことだが、新しい課題もある。職場への定着支援だ。
2010年に独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が発表した「精神障害者の雇用促進のための就業状況等に関する調査研究」によると、ハローワークを通じて就職した精神障害のうち、1年以上在籍したのは49.1%だった。つまり、半分は1年以内に辞めている。
離職理由で最も多いのは「自己都合」(77.9%)で、契約期間満了は9.2%だった。厚労省の担当者も、「次は定着についても更に尽力していきたい」と意気込む。
来年2018年4月には、民間企業の法定雇用率が2%から2.2%へ引き上げられる。厚労省は2020年度末までに2.3%を目指すと決めている。