厚生労働省は6月1日、2016年度の職場での熱中症による死傷者数を発表した。それによると、昨年度の死傷者数は462人で、うち死亡者は12人だった。
業種の内訳は、建設業が7人と半分以上を占め、他は商業、清掃・と蓄業、農業、林業、その他でそれぞれ1人だった。建設業の死者数は5年連続で1位を記録している。
職場で頭痛、翌朝起きてこないため家族が様子を見に行ったら呼吸停止状態
死亡者の当時の就労環境の状態も公表されていた。建設業で働いていた30代のケースについては、次のように説明されている。
「基礎型枠の解体作業において、単管等の資材の受け渡し等の作業に従事していたが、体調が悪くなってうずくまり、その後、その場に倒れこんだ。すぐに救急車を手配して病院へ搬送したが、およそ3時間後に死亡が確認された。被災者は採用3日目だった」
また、商業で働いていた20代は
「事業場にて商談、展示車両の洗車業務等に従事していた労働者が、午後5時30分頃、事業場内の清掃作業中に頭痛を訴えた。2階の休憩室で休養し、午後7時過ぎに帰宅した。翌朝、起床してこないことから、家族が様子を見にいったところ、呼吸停止の状態で発見された」
という。
死亡事例12件は、暑さ指数(WBGT値)を測定していなかった。この指数は気温、湿度、風速、ふく射熱も考慮した暑熱環境によるストレスを評価するもので、労働環境・運動環境の指針として有効とされている。
職場環境を数値化し、適切な対処法を取ることで熱中症を防げるはずなのに、現状把握すらままならないようでは、効果的な予防には繋がらない。
厚労省労働基準局安全衛生部安全衛生課の担当者は、この指数に関し「建設業などを中心に測定をお願い」しているというが、測定の有無は事業者の裁量に委ねられている上、「どの程度浸透しているかは未知数」と述べる。
また、体を暑さに慣らすための期間「順化期間」が設定されていないケースも9件あった。通常は1週間ほどかけ、暑い環境にいる時間を徐々に長くすることが理想だが、こちらの設定も義務ではない。
糖尿病、高血圧症、精神・神経疾患などを持つ人は特に注意
熱中症は、持病の有無でも発症可能性に差が出る。厚労省が5月1日から9月30日まで展開している「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」のパンフレットには、「糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患、感冒、下痢などがあると熱中症にかかりやすく」なると記載されている。該当する人は特に注意が必要だ。
また、職場での熱中症は、日差しや気温のピークとなる14時から16時台に多く発生している。ただ、「日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化して病院へ搬送されるケースも散見される」ため、陽が落ちてからも油断はできない。
職場での熱中症による死傷者数は、例年400人~500人で横ばいだという。今年も既に暑い日が続いている。労働者がこまめな水分・塩分補給や休憩の取得ができるよう、使用者は対策を講じる必要がありそうだ。