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KinKi Kids、アンプラグドで露わになった音楽の根幹 『MTV Unplugged: KinKi Kids』レポート

2017年06月01日 11:33  リアルサウンド

リアルサウンド

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 電源を最低限しか使わない演奏スタイル「アンプラグド」。多くの有名アーティストのアンプラグド・ライブを企画してきたMTVの番組『MTV Unplugged』に、CDデビュー20周年を迎えるKinKi Kidsが初出演を果たした。2017年5月31日の豊洲PITで、その貴重な『MTV Unplugged: KinKi Kids』の収録を見られたのはわずか800人ほどだ。


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 ステージの両脇には赤いカーテンが垂れ、さらにステージには20個ほどのライトが星のように輝いていた。そして、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」のアンプラグド音源が会場に流れる中、吉田建を中心としたバンドメンバーが登場。ストリングスが調弦する音は、さながらクラシックのコンサート前のようだった。そこにパーカッションが鳴りだして、大歓声の中、KinKi Kidsが登場した。


 1曲目の「ボクの背中には羽根がある」では、フルートの音色がフォルクローレを連想させた。アンプラグド編成ならではの幕開けだ。松本隆作詞、山下達郎作曲によるデビュー曲「硝子の少年」では、哀愁に満ちたアコースティック・ギターに導かれるかのように、ふたりのボーカルも艶を増していく。KinKi Kidsとストリングスのみによるパートも緊張感に満ちていた。アンプラグド編成といっても、音の厚さはエレクトリック編成に負けていない。


 安藤裕子作詞作曲による「道は手ずから夢の花」では、「硝子の少年」から一転して音数の少ない伴奏とともに、オリエンタルなメロディが歌いあげられた。「愛されるより 愛したい」は、管楽器がリードしていくラテン・アレンジに。こうした意外性もアンプラグドならではのものだ。吉田美和作詞、吉田美和・中村正人作曲による「ね、がんばるよ。」は、アンプラグド向けに作られた楽曲のようにすら聴こえる。ミディアム・ナンバーの「薄荷キャンディー」では、アコースティック楽器の音色とともに、堂本光一と堂本剛のボーカルが伸びやかに響いた。


 中盤はアルバムからも選曲し、堂本剛が「どうぞたくさん泣いてください」と言った後に歌われたのは「月光」。間奏とアウトロにソプラノサックスが入る以外は、ストリングスのみによる伴奏で歌われ、堂本光一と堂本剛のボーカルは聴く者にせつせつと迫るものがあった。「Love is… ~いつもそこに君がいたから~」もアンプラグド映えするミディアム・ナンバーだ。


 吉井和哉作詞作曲による「薔薇と太陽」は、パーカッションと管楽器の響きによって熱いラテン歌謡となっていた。伊達歩(伊集院静)作詞、筒美京平作曲による「やめないで,PURE」でも、管楽器が歌謡曲の雰囲気を醸しだす。その「やめないで,PURE」の終盤で堂本光一と堂本剛がアコースティック・ギターを抱えると、吉田拓郎作曲の「全部だきしめて」へ。エレキ・ギターとアコースティック・ギターの絡み合いも心地良かった。


 そして終盤は、堂本剛作詞、堂本光一作曲による「愛のかたまり」、「もう君以外愛せない」というバラード2曲で締めくくった。


 ここまで音楽面について書いてきたが、随所に堂本光一と堂本剛によるMCも入り、ファンに向けたフランクで軽妙なトークも聞かせた。堂本光一と堂本剛がファンからの声をいじることもあれば、お互いにツッコミ合うことも。ライブ中は感極まって泣いているファンもいたが、MCになると笑い声が絶えず、話芸とも呼びたくなるレベルのものだった。しかも、編集するポイントを意識して、急に真面目なトークに戻ったりもするので、ファンが笑ってしまうことも。そんなKinKi Kidsとファンの交歓を見られたことも収穫のひとつだった。最終的にMCがどう編集されるのかは、7月17日の放送を楽しみにしてほしい。


 そのMCで堂本光一は、「山下達郎さんにいただいた音楽が僕らの土台にあるのではないかと思います」という主旨の発言をしていた。KinKi KidsがCDデビューした1997年は、すでに「歌謡曲」というよりも「J-POP」の時代だ。しかし、『MTV Unplugged: KinKi Kids』のKinKi Kidsのライブでは、随所で歌謡曲の要素が顔を出していた。それはまるで、アンプラグドという編成によって、KinKi Kidsの音楽的な根幹が露わになったかのようでもあった。『MTV Unplugged: KinKi Kids』は、歌謡曲からJ-POPへの流れを受け継ぎながらも、KinKi Kidsがそれを更新しつづけていることを示したライブでもあったのだ。(宗像明将)