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欅坂46 菅井友香&小林由依、演奏シーンで個性発揮 『残酷な観客達』演出の意図を読む

2017年06月01日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 デビューシングル『サイレントマジョリティー』から4作連続で、平手友梨奈をセンターに据えてきた欅坂46。ドラマ『残酷な観客達』(日本テレビ)においても、葉山ゆずき(平手友梨奈)をメインとして物語は進んで行くが、第3話では杉崎凛(菅井友香)、小柳郁美(小林由依)の2人にスポットが当てられた。


参考:欅坂46、新ドラマ『残酷な観客達』の狙いは? SNS社会への風刺に込められたもの


 菅井と小林には、楽器の経験者という共通点がある。菅井は、お嬢様キャラと馬術のイメージが先行しているが、ピアノの経験から高校時代に3年間、バンドのキーボードとして文化祭へ出演していた。小林は、今泉佑唯と組むユニット“ゆいちゃんず”でのギターに加え、中学生の頃、吹奏楽部でアルトサックスを手にし、地区大会で受賞するほどの腕前を持つ。


 第2話で、クラスメイトに一歩遅れながらも教室からの脱出に成功した葉山と永嶺みこ(長濱ねる)であったが、次の音楽室で待っていたのは再び置かれた「いいね!」を獲得するためのタブレットと、ピアノを弾く杉崎の姿だった。音楽一家に育った杉崎。だが、杉崎は過去にコンクールで、観に来た親戚一同が席を立っていくという苦い経験を味わっていた。涙を流し、緊張に手が震える。そこに近寄っていくのが、小柳だ。彼女もまた、サックスに細工をされるといういじめを受け、舞台の上で恥ずかしい思いをして以来、楽器から遠ざかっていた。杉崎の説得のもと、小柳はサックスを演奏し、「いいね!」達成へのきっかけとなる。


 デビューから1年が経ち、様々な経験を積んできた彼女達。バラエティ番組での無邪気な表情は、ファンには浸透しているが、パブリックイメージとしてはクールな欅坂46の印象が強いだろう。昨年、彼女達が主演を務めたドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)は、グループのカラーをそのままスライドさせたようなミステリードラマだった。


 今作の『残酷な観客達』にも、舞台が「教室」となっていることなど、『徳山大五郎』とも通ずる箇所がいくつか存在する。菅井と小林の演奏シーン然り、「いいね!」を獲得するために披露されるシュールなアピールコメントなど、欅坂46を深く知らなければ分からないようなネタがいくつも仕込まれている。菅井を例に挙げれば、「あぶりカルビ」の早口言葉は、滑舌の悪い菅井が『欅って、書けない?』(テレビ東京系)で苦戦したものだ。膨大な情報のアーカイブと、バラエティ番組でのオリジナルネタを随所に挟むことで、ファンをクスリとさせると同時に、一般層の視聴者には新たな彼女達の一面を見せることができるというわけだ。


 物語が進むにつれ、不可解なことは次々と増えていく。窓の外で落下する生徒、ナレーションに操作される生徒、なぜ彼女達は教室に閉じ込められているのか。エンディングの映像の中で、少しずつではあるが先の予告が公開されているのが、何とも憎い演出だ。(渡辺彰浩)