スーパーフォーミュラ第2戦岡山、ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)は日曜日のレース2を予選5位・決勝7位初入賞という結果で終えた。前日のレース1からは大幅な順位的前進が見られたといえるが、この程度で満足しているはずはない本人、どうレースを振り返るのだろうか。
四輪タイヤ交換義務のあるレース2は予想通り1周目から義務消化に入るマシンも多い展開となった。そのため1周目の完了順位だけではスタートから1周目序盤の順位攻防の良し悪しが見えてこないわけだが、ガスリーの1周目セクター1通過は6番手。つまりこの時点までで1ポジションダウンである。
「スタート自体は良かったんだ」とガスリー。アウト側3列目の5番グリッドから好発進したガスリーは、コースの外側いっぱいに進路を取った。しかしターン1手前では「たくさんのマシンが横にいたね(苦笑)。外に押されて、僕のスペースはなくなってしまった」という状況に直面する。
グラスゾーンにタイヤを落とすような走りになってしまい、ポジションを落とすことに。ただ、これは場合によっては大幅な後退もあり得たなか、よく1ポジションに損失を抑えたともいえる局面だった。
そして1周目にタイヤ交換義務消化へ。事前のプラン通りだが、チームの藤井一三オブザーバーによれば、状況によってはドライバー判断で別の選択肢を採る可能性も含んではいたという。
レース中のマシンのフィーリングについてガスリーは、「ドライビングが難しい状態だった。リヤのグリップ不足に悩まされ続けていたんだ。レース直前の8分間走行でその症状がひどく、グリッドで調整して良くはなったんだけど」と振り返る。
オーバーステアは完全には解決しなかった。藤井オブザーバーによると、予選時にはアンダーステアを訴えていたらしく、マシンの状況は一日のなかでもアンダーから大オーバー、オーバーと推移していた模様だ。
レース中には次のような実感もあったとガスリーはいう。「山下(健太)選手の後ろを走った時だけど、正直なところ、今日は彼(トヨタエンジン)の方にストレートスピードの面で少し利があるように感じられた。我々(ホンダ勢)もさらに進化する必要がある」
レース2決勝は7位でのチェッカー。「ポイントを獲れたことはこれまでに比べればいいし、予選も決勝もホンダ勢トップだったことは良かったとも思う」とガスリーは話すが、結果にも内容にも満足はしていない様子だ。開幕前の好調・好結果を考えれば当然だろう。
次の富士戦まではまた1カ月以上も間隔が空くが、「それほどいい結果でなかった後は精神的にツラいよね。すぐに次のレースがあった方がいいんだけど。でも、チームと一緒に準備をする時間がたくさんあるということだから、しっかりやっていきたいと思う。今回は苦戦したこともあって、僕もナオキ(山本尚貴)もかなりいろいろなことを試した。そういったデータも活かして、富士に向けて良い方向性を得たいと考えている」
岡山戦レース2でのガスリーのV字回復は成らなかった。ただ、予選でのトップ5入りやスタートの成功など、浮上の兆候が見られた一日であったのもたしか。そしてレース後にはさっそく、チームスタッフと長いこと話を続けていた。時折、お尻を振るような仕草をしていたところを見ると、レース2でのリヤグリップ不足に関しての議論が中心だと思われる。
この日はレース後すぐに岡山を発たなければならないスケジュールというガスリーだったが、その割にはずいぶん長くサーキットにとどまっており、次戦富士への意気込みのほどが感じられた。
さて、前出の藤井オブザーバーはかつてNAKAJIMA RACINGでアンドレ・ロッテラーやロイック・デュバルの全日本トップフォーミュラ初期参戦時代を見てきた人物。ガスリーの場合は順調なら来季はF1、ここにいない可能性が高いのだが、それはさておいて考えた場合に“アンドレやロイック級になる可能性をもっているドライバーですか”と藤井オブザーバーに聞くと、「なると思うよ。(参戦継続なら)来年、なるよ」との答え。
「とても丁寧に運転しているし、若いんだけど落ち着くべきところは落ち着いている。クルマの状態が(今は)良くないことも受け容れて走っているし、ミスしても他人のせいにしたりしない。金曜に1コーナーでクラッシュした時も、『自分のミスだ。ちょっとオーバースピードで突っ込みすぎた』って言っていたからね。焦ったりする姿も見せないし、頼もしいと思うよ。ものごとを理解して動いている。予選でのタイヤの温め方とかには、まだ難しさを感じているとは思うけどね」
名将からの評価も高いガスリー。今後もF1帯同とのスケジュールがひとつの課題にもなってくるが、第3戦富士から彼がさらに巻き返してくるかどうかは、やはり2017年シーズンのスーパーフォーミュラの大きな見どころになりそうだ。