厚労省は5月30日、2016年度の育児休業取得率を発表した。女性は前年度から0.3ポイント上昇して81.8%、男性は0.51ポイント上昇して3.16%で、男性は統計を取り始めてから初の3%台を記録した。
女性の育休取得率は事業所規模に左右 男性は規模の大小にかかわらず低い
職種別に見ると、取得率が最も高かったのは男女とも「金融・保険業」で、女性は98.7%、男性は12.33%だった。女性で90%を超えた職種は他にも「電気・ガス・熱供給・水道業」(96%)、「情報通信業」(97.7%)などがあるが、男性は、「金融・保険業」以外の職種すべてで1桁台以下だった。最も低かったのは、郵便局や協同組合などが該当する「複合サービス事業」でわずか0.48%だった。
事業所規模別に見ると、女性は5~29人で68.9%、30~99人が87.2%、100~499人が92.7%、500人以上だと95%と、事業所規模が大きくなるにつれて取得率が高まる傾向にある。一方で男性は、規模に関わらず2~3%台を推移しており、企業の規模の大きさと育休取得率に関連はないようだ。
上司に「育児は母親の役割」「育休をとればキャリアに傷がつく」と言われた人も
取得率は低くても、取得に対する需要は高いようだ。2014年に日本労働組合総連合が発表した調査では、「子どもが生まれたときには取得したい」と答えた働く男性は78.5%にも上っている。
しかし、実際に取得するには壁も多い。子どもがいて、育児休業を取得したかったが出来なかった人・これから取得したいが出来ないと思う人にその理由を複数回答で訊ねたところ、「仕事の代替要員がいない」が57.9%で最も高く、次いで「(育休中は無給のため)経済的に負担となる」(32.6%)、「上司に理解が無い」(30.2%)が続いた。
「パタハラ」の問題も深刻だ。子どもがいる男性を対象に職場でのパタハラ経験を聞いたところ、11.6%は「経験がある」と答えている。内容は
「子育てのための制度利用を認めてもらえなかった」
「制度利用を申請したら上司に『育児は母親の役割』『育休をとればキャリアに傷がつく』などと言われた」
「制度利用をしたら、嫌がらせをされた」
などで、取得希望者が多くても職場の理解が進んでいないことや、人員配置の問題などが示唆されている。
育休取得率の統計を取り始めた1996年の取得率は、女性が49.1%、男性が0.12%だった。当時と比べれば取得に向けたハードルは男女とも下がっているが、男性の取得率3%台というのは、他国と比べて依然低いことに変わりはない。
政府は第四次男女共同参画基本計画に基づき、2020年の男性の育児休業取得率を13%まで引き上げる目標を掲げている。具体的な道筋は不透明のままだが、取得を促す制度や取得率の公表など、企業の意識を変える政策の必要性は、まだまだ高いようだ。