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【F1モナコGP無線レビュー】大荒れとなったモナコの週末。初走行の新人全員にクラッシュの洗礼

2017年05月31日 11:42  AUTOSPORT web

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F1モナコGP 予選・決勝でクラッシュを喫したストフェル・バンドーン
今年のF1モナコGPは大いに荒れた。マシンの高速化とワイド化によってクラッシュが多発したのは間違いないだろう。そんな大荒れの場面を無線で振り返ってみよう。 

 走り始めのFP1からトップドライバーたちはマシンの車幅感覚を掴むために限界を攻めていった。セバスチャン・ベッテル、キミ・ライコネン、ジェンソン・バトンらがプールサイドシケイン出口のターン15イン側のガードレールをかすめるように走る場面がスーパースロー映像で捉えられた。それでもマシンを壊すところまでいかないのはさすが、超一流のドライバーたちだ。

ベッテル「OK、ちょっとチェックしてくれ。ターン16への入口のバリアをブラシしたから」

バトン「スイミングプールのバリアに擦ったよ。とてもジェントルにだったけどね」

 そしてFP2ではランス・ストロールがマスネで今年最初のクラッシュを演じた。

ストロール「とにかく全体的にグリップが欠けている。どうしてだ?」
 そう不満を訴えていた矢先のクラッシュだった。

 土曜午前のFP3では、昨年後半デビューでモナコ初体験のエステバン・オコンが洗礼を浴びることになった。

オコン(以下、OCO)「第3セクターでずっとブロックされたよ」

フォース・インディア(以下、FIN)「それがモナコっていうものだよ」

 レースエンジニアとそんなやりとりをしていた矢先に、ベテランたちがかすめたターン15のガードレールにヒット。右フロントを壊し、ターン16イン側の“発射台”のようなソーセージ縁石で跳ねて出口のガードレールにまっすぐ突き刺さった。

OCO「クラッシュしたよ」

FIN「大丈夫か?」

OCO「あぁ、大丈夫だよ」


 そして予選Q2ではストフェル・バンドーンまでもが同じ場所で餌食となり、モナコ初走行の新人は全員がクラッシュを演じることとなった。

バンドーン「クラッシュしたよ、ごめん」

マクラーレン「了解。完全にマシンをスイッチオフしてくれ」

 決勝ではさらに荒れた。まず何事もなく全車がクリアしたかに見えた1周目だったが、混乱の中で小さな接触はあり、セルジオ・ペレスはフロントウイングにダメージを負った。

FIN「エアロバランスはどう? 翼端板に小さなダメージがあると思われる」

ペレス(以下、PER)「あぁ、ダメージを感じているよ」

 16周目にはフロントウイングの左側ステーが破損して脱落し、ペレスは早めのピットストップを余儀なくされた。これによって後方に下がり苦しいレースを強いられたペレスの苛立ちは募り、エンジニアからの指示にもフラストレーションを露わにした。

FIN「エンジン温度がクリティカルだ。オーバーテイクできそうにないなら間隔を空けて走ってくれ」

PER「安全のために(フロントウイング交換で)ピットインさせたんだから、エンジンがブローアップしたって誰が気にするんだ!」

 セーフティカーが明けたレース終盤にはバトルが激しさを増し、エンジニアからのセッティング変更指示に対しても苛立ちを見せた。

FIN「イエロー7ポジション9、グリーン1……」

PER「僕にクラッシュさせたいのか!? XXX! 静かにしてくれ! 100%集中が必要なんだ!」

 そして71周目にはラスカスで強引にダニール・クビアトのインを刺してクラッシュしてしまった。モナコを得意とするペレスだが、フラストレーションが彼の集中力を奪い、残念な結末を呼んでしまったことは明らかだった。


 60周目にはポルティエでジェンソン・バトンがパスカル・ウェーレインのインに飛び込み、浮き上がったウェーレインのマシンは片側2輪走行でアウト側のウォールに横倒した状態でぶつかって止まった。

ザウバー(以下、SAU)「パスカル、聞こえるか? 聞こえるか!?」

ウェーレイン「あぁ、聞こえるよ。大丈夫だよ。クルマから出られるともっと良いんだけどね」

SAU「しばらく辛抱してくれ」

 ワイド化されたマシンでオーバーテイクが極端に難しいことに加え、リヤウイングが低く下がったことで「今年のミラーは極めて後ろが見えづらい。それはFIAにもチームにも報告した」と初めて今季型マシンに乗ったバトンが言うような要素も影響したようだ。

 セーフティカー走行中の64周目にはマーカス・エリクソンがターン1でラインをはずしタイヤカスに乗ってクラッシュ。エリクソンはそれ以前から「プッシュするたびにウォールに突っ込みそうになる! 全然グリップがない!」と不満を訴えていた。

SAU「何が起きたんだ?」

エリクソン「あ~~ッ! ウォールに突っ込んだ」

 そしてリスタート直後の67周目にはバンドーンまでもが同じようにターン1でクラッシュ。

 マシンが速くワイドになったことで、屈指のドライバーサーキットであるモナコの難易度はさらに上がった。それを如実に示すような大荒れの週末だった。