日本の若者の10人に1人は、仕事も通学もしていない、いわゆる「ニート」であることがわかった。経済協力開発機構(OECD)は、日本の15~29歳の若者について調査したレポート「若者への投資:日本」を5月29日に発表。日本のニートの特徴や若者の貧困の実態が明らかになった。
日本のニートの割合は、2015年には10.1%だった。これはOECD平均の14.7%を下回っている。しかし求職活動をしていないニートの割合は諸外国よりも高い。日本では3分の2以上のニートが仕事を探していないのだ。
日本では学歴とニートの割合にはあまり関係がない
それは日本のニートの多くが、家事や育児のために働いていない女性、いわゆる専業主婦だからだ。日本ではニートを「15~34歳で非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者」と定義しており、専業主婦はニートに含まれない。しかしOECDではたとえ家事をしていても、就業も通学もしていなければ「ニート」と定義している。そのため専業主婦もニートという扱いだ。
ただ、家事と育児が理由でニートになっている女性の半数は働く意欲を持っている。子どもを預けられる環境が整っていないために、働くことができない、というのが現状だ。保育サービスを受けている0~2歳児の割合は、OECD平均よりも低い。そのためOECDは、同報告書の中で保育環境を整えるよう提言している。
またOECDでは、学歴別のニートの割合を調査している。いずれの国でも高等教育を受けていない低学歴の方がニートの割合は大きい。しかし、日本は他国と比べると、学歴によるニート率にあまり違いが見られなかった。
高校中退率は低いが、不登校率は微増傾向
若者の相対的貧困率も諸外国より大きい。背景には、失業手当と生活保護の受給率が低いことがある。 日本では、失業時に失業手当を受ける若者は20%に満たず、ドイツの50%前後よりもかなり少ない。生活保護を受給する若者もほぼ0%で推移しており、10~20%の人が受給しているドイツよりもはるかに少ないことがわかる。
高校を中退する人は、1995年以降3%を上回ったことがなく、中退率は非常に低い。一方、不登校の生徒の数は微増傾向にある。学校に馴染めない生徒のためにも、フリースクールなどの多様な学びの場が必要だ。
日本では専門学校に進学したり、高校の専門科に進学したりする人の割合は小さい。アイルランド、カナダ、韓国に次いで、下から4番目だ。若い頃に職業に直結する教育を受けることができず、それが原因でニートになった、という人もいるだろう。
ひきこもり支援も十分とは言えない。2014年にひきこもりサポートセンターから接触を受けた人は、33万人いるひきこもりのうち1万7724人にすぎない。また失業者のうちの半分しかハローワークを利用していないので、何らかの対策をする必要がある。
OECD社会政策課シニアエコノミストのステファン・カルシロ氏は、同報告書の発表に合わせて来日。現状を踏まえた上で「職業訓練や保育サービスを拡充することが必要」と訴えた。