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Dragon Ash、OKAMOTO’S、モールル、神僕……新作の“歌詞”にこめられたメッセージを読む

2017年05月30日 13:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 いくら4つ打ちのダンスビートが流行っても、サークルモッシュやダイブが浸透しても、ライブで楽しく盛り上がるだけでは、ロックバンドは決して長続きしない。賛否両論はあるだろうが、大事なのはやはり歌。リスナーの心を捉え、共感や感動を生み出せる歌詞が書けることが、長く支持されるための大きなポイントなのだ。そこで今回は優れた歌詞を書けるロックバンドの新作を紹介。できれば一人で、じっくりと歌詞を堪能してほしいと思う。


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 デビュー20周年のメモリアルイヤーを飾る、約3年4カ月ぶりとなるフルアルバムにDragon Ashは『MAJESTIC』というタイトルを冠した。“威厳のある/荘厳な/堂々とした”という意味を持つこの言葉が示す通り、本作には、20年以上に渡って日本のロックシーンの可能性を切り開いていた彼らの誇りと矜持がはっきりと掲げられている。そのことをもっとも端的に示しているのが「Stardust」のなかにある<every one of us isn‘t worthless dust(誰一人無価値なちりなんかじゃない)>というリリックだろう。ミクスチャーロックという武器を持ち、ブレることなく自らの表現を追求することで、際立った個性とカリスマティックな存在感を手にしたDragon Ash。音楽ファンの圧倒的な支持を得てきた彼らが20年目で辿り着いた答えが、このフレーズには明確に示されていると思う。リアルなメッセージ性と神話的な世界観を兼ね備えた言葉の表現も素晴らしい。


 2016年に行われたOKAMOTO’Sのキャリア初の47都道府県ツアー『OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016』のライブ音源とツアー中に制作された新曲「ROCKY」を収録したCD、ツアーの最終公演(2016年10月29日/日比谷野外大音楽堂)を収録したBlu-rayによる2枚組『LIVE』。ハマ・オカモト(Ba)を筆頭に、オカモトレイジ(Dr)、オカモトコウキ(G)という名プレイヤーが揃ったOKAMOTO’Sの濃密にして自由なバンドサウンドこそが本作の魅力なのだが、もうひとつの軸になっているのはオカモトショウ(Vo)が紡ぎ出す言葉のパワーだ。たとえばファンとの絆をテーマにしたという「ROCKY」では、<倒され 汚され 笑われそれでも今また俺は立ち上がる>という泥臭いフレーズとヒップホップ的な英語のリリックを組み合わせることで、独自のグルーヴに結び付けている。言葉を音として捉えながら、生々しい感情と直結したメッセージを放つセンスは、現在のバンドシーンでもかなり際立っていると思う。


 モーモールルギャバンの前作『シャンゼリゼ』(2015年6月)以来、約2年ぶりとなるニューアルバム。『ヤンキーとKISS』というタイトル、アニメーター・すしおとのコラボによるジャケット、ベース/ドラム/キーボードのアンサンブルを独自の感覚で追求しまくったサウンドともに強烈なインパクトを放っているのが、あまりにも独創的な歌詞の世界だ。「ガラスの三十代」「亜熱帯心中」といった80年代J-POPのパロディも楽しいが、もっとも心に残ったのは、そのままズバリのタイトルにもグッとくる「ロックミュージック」。<My life 難航中>という現実をちゃんとわかっていながら、それでもロックミュージックの力を信じ、<悲しみの荒野を軽やかなスマイルで進めますように>と歌い上げる。ナンセンスに突き抜ける爆発力だけでなく、こういうホロッとくる感じもまた、このバンドの魅力なのだ。


 2016年11月に始動。ドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)の主題歌(「CQCQ」)に抜擢されたことで急激に注目度を上げている“神様、僕は気づいてしまった”の1stミニアルバム『CQCQ』。メンバーの名前以外のプロフィールはほぼ不明、謎のベヴェールに包まれている彼らだが、楽曲のクオリティの高さは完全に新人離れしている。聴く者を飽きさせないフックを散りばめたアレンジメント、突き抜けるような鋭さと切実な情感を合わせ持ったボーカルにも惹きつけられるが、もっとも鮮烈なのはやはり歌詞。他者との関係、自意識の強さに苛まれつつ、それでも救いの光を求めようとする人間の姿をリリカルに描き出すこのバンドの歌詞は、いわゆるメンヘラ的な世界観を持ちつつも、決して自己憐憫に陥らない客観性とファンタジックな雰囲気の言葉選びによって、幅広い層のリスナーがすんなり入り込める間口の広さを備えている。まさに“売れる歌”を書ける逸材だと思う。(森朋之)