2017年05月30日 10:34 弁護士ドットコム
夫の母が、隠れてこっそりと夫名義のクレジットカードを使用していた。同意なく使われてしまっても、名義人である以上、支払いをしなければいけないのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにそんな投稿が寄せられました。
【関連記事:バスの降車ボタンを押して「うっそでーすw」 小学生の「いたずら」は犯罪になる?】
投稿者の女性の夫のもとに、カード会社から請求書が届いたことから、発覚したといいます。なりすまして使われてしまっても、夫に返済義務はあるのか。川見未華弁護士に聞きました。
「ご相談のケースでは、カード約款の免責条項の規定が問題となります。
カード約款は、各社によって内容が異なりますが、第三者のカードの不正利用については、原則としてカード名義人(会員)の負担としながらも、カード会社や警察へ連絡する等の手続が行われれば、カード会社が損害を補償すると規定するものが多いようです」
ーー今回のケースでも、補償されることになるのでしょうか
「多くの約款では、家族が不正使用した場合は、補償規定は適用されず、会員が負担するものと規定されています。
こうした約款に従えば、本件では、会員である夫が支払い義務を負うこととなります。
しかしながら、家族の不正使用という一事のみをもって、全ての責任を会員である夫に負わせるのは、自己責任の原則に照らしても問題があります。そこで、夫側としては、約款の規定にかかわらず、自己に帰責性(法的な責任)がないことを主張立証し、支払い義務を負わないと主張していくことが考えられます」
ーー実際に、家族でも支払い義務を負わないとされるケースはあるのでしょうか
「未成年の子が親のクレジットカードを不正利用したことが問題となった裁判例では、親の帰責性判断に際し、カード会社において不正使用排除のための利用方法の構築が不十分であったことが指摘されました。結果、親にカードの情報管理についての帰責性を問うことができないとして、親の支払い義務が否定されています。
最終的に、カード名義人である会員が支払い義務を負うかどうかは、会員が、家族を含む第三者に不正使用されないよう十分な注意をしていたかどうかが問われることになります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
川見 未華(かわみ・みはる)弁護士
東京弁護士会所属。家事事件(離婚、DV案件、親子問題、相続等)及び医療過誤事件を業務の柱としながら、より広い分野の実務経験を重ねるとともに、夫婦同氏制度の問題や福島原発問題等、社会問題に関する弁護団にも積極的に取り組んでいます。
事務所名:樫の木総合法律事務所
事務所URL:http://kashinoki-law.jp/