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flumpoolが武道館で果たした“3度目の正直” ありのままの姿見せた『~ラストコール~』公演

2017年05月29日 15:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 5月20日、21日にflumpoolが開催した『flumpool 8th tour 2017 Beginning Special「Re:image」at NIPPON BUDOKAN』は、2018年に迎えるデビュー10周年への期待を大きくさせるものとなった。同公演は秋からのツアー『flumpool 8th tour 2017 「Re:image」』の幕開けとして行なわれたものだが、3度目の武道館公演とあり彼ら自身の武道館への思いや心持ちを“Re:image”する重要な公演だったと言える。本稿では1日目にあたる5月20日の『~ラストコール~』公演の模様をレポートする。


(関連:山村隆太月9出演から新作『ラストコール』まで…flumpoolが考える、バンドの“リノベーション”


 この日は中央のステージを360°度客席が囲む形となり、開演前から観客達は待ちきれぬ表情を見せていた。公演を象徴するようなアニメーションが流れ、メンバーが登場。1曲目の「Touch」ではサポートの磯貝サイモン(Key)に加え尼川元気(Ba)がキーボードを奏で、バンドサウンドにとどまらない音の豊かさを見せつけた。山村隆太 (Vo)が「今日は最高の1日にしようぜ!」と気合を入れると、「labo」ではハンドマイクで会場を煽り、熱く盛り上げた。


 「3度目の武道館です。1度目、2度目は色々悔しい思いもあった。3度目の正直ということで、最高の武道館の思い出を作って、最後まで燃え尽きていきましょう!」(山村)


 デビューからわずか1年で行なった1度目、そして5周年を迎えて開催した2度目の武道館。山村はどちらも悔しさを残したままだった、とMCで素直な気持ちを話しながらも、3度目の武道館公演に序盤から手応えを感じたような晴れ晴れとした表情を見せていた。過去に当サイトのインタビュー(参考:山村隆太月9出演から新作『ラストコール』まで…flumpoolが考える、バンドの“リノベーション”)で「flumpoolって、良くも悪くも『優等生』というか、順風満帆でやってきたっていう風に思われていて、そのイメージがなかなか払拭できなかったんですよね」「今後は自分たちが失敗したり葛藤したりしている姿を、どんどんさらけ出していきたい」と語っていた通り、この日は阪井一生(Gt)が山村の主演ドラマ『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)の視聴率をイジるなど、優等生ではなくありのままの姿を見せる場面も多かった。


 ライブ中盤では過去の武道館でのライブ映像を交え、ステージの中央で4人が向き合う形で「花になれ」を演奏。数々のヒット曲を生み出し、音楽シーンにおいて存在感を増していった彼ら。確実に表現力が向上したプレイに来年にはデビュー10年を迎える歴史を感じた一方で、4人で向き合う姿は“4人で楽しく演奏する”という初心を忘れずにいるようだった。  そして続く「FREE YOUR MIND」「傘の下で君は・・・」では四方を向いてメンバー同士が背中合わせになり、客席側を向いてパフォーマンス。ステージを囲むモニターが降り、上昇したステージが回転する中での演奏には客席から歓声が上がった。外側を向いての演奏は先ほどの「花になれ」との対比となり、4人で始めたバンドの音を幅広いリスナーに届けていることを示唆するようだった。「花になれ」から抱く印象とは異なる、ダンスミュージックを取り入れた2曲を公演の中盤で披露した彼ら。このパフォーマンスは、サウンド面においても常に進化し続けようという意気込みの表れだろう。


 続く代表曲「Over the rain ~ひかりの橋~」や本公演のサブタイトルにもなった「ナミダリセット」「ラストコール」ではポップスの担い手としての矜持を見せた。この日は初めて彼らのライブに足を運んだという観客も少なくなかったが、「Blue Apple & Red Banana」「Sprechchor」といったロックチューン、タオルを回し盛り上げながら披露したエレクトロな「World beats」と次々と披露し、観客を飽きさせない展開へ。そして本編最後の「星に願いを」では大合唱を起こし、一体感を生んだ。


「思うようにいかないことばっかりで逃げ出したいと思うこともあったけれど、俺たちに足りないところを埋めてくれたのはみなさんです」「人を信じられなくなっても自分だけは信じて、明るい未来に向かって一緒に戦っていきましょう!」(山村)


 スター然とした立ち振る舞いではなく、自然な佇まいで共感を呼ぶflumpool。一方的に「頑張れ」と励ますのではなく、ともに戦おうと呼びかける彼らの目指す姿は、アンコールで披露した「大切なものは君以外に見当たらなくて」「君に届け」からも見えた。どちらもリスナーの耳に馴染み深く思わず口ずさみたくなる曲で、山村が呼びかける前から客席では自然と合唱が起きていたほどだ。アンコールでは山村が代表曲の一つである「君に届け」のヒットに複雑な思いがあったことを明かしつつ、「思い出の曲です。まっすぐな気持ちで届けたいと思います」と笑顔を見せたのも印象深かった。<僕にしか言えない言葉を/今/君に届けたい>という言葉は、武道館の観客のみならず彼らのリスナー全員に向けられたもののように思えた。 EDM、ロックなど幅広い音楽性を見せると同時に、ありのままの泥臭さをさらけ出して自らを「Re:image」し続けていることを感じた本公演。見事に“3度目の正直”を果たした彼らは、今後も新たな一面を見せてくれるに違いない。(村上夏菜)