28日にインディアナポリス・モータースピードウェイで開催されたインディカー・シリーズ第6戦第101回インディ500。8度目のインディ500に挑んだ佐藤琢磨が日本人初となるインディ500制覇を成し遂げた。
ポールポジションはスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)だった。今年からホンダに戻って来た彼らは、1年目にしてホンダエアロキットをマスターしたかに見えた。しかし、彼らのレースセッティングはまだ万全ではなかったようだ。
レースのイニシアチブを握っていたのはアンドレッティ・オートスポートだった。予選3位だったアレクサンダー・ロッシは、2連勝も可能かと思わせる力強いレースを戦っていた。
F1チャンピオンのフェルナンド・アロンソも、レーサーとしての高い能力をフルに発揮して予選で5位に食い込み、レースでは優勝争いに加わる。さらに、予選10位からライアン・ハンター-レイも上位へと進出してくる。
琢磨は3回目のピットストップで5つもポジションダウンして10番手に。そして、ここからのリスタート後にはタービュランスの中で大苦戦。順位は17番手にまで落ちてしまう。しかし、ここからジワジワと着実に挽回をしていき、アクシデントに巻き込まれることもなかった。
エアロの開発が昨年度から凍結したこともあってか、実力の伯仲ぶりがさらに高まっていた今年のインディ500では接近戦がいたる所で繰り広げられ、アクシデント多発となった。
ポールシッターだったスコット・ディクソンは単独クラッシュして壁から跳ね返ってきたジェイ・ハワード(シュミット・ピーターソン)にヒットされリタイア。終盤にはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、オリオール・セルビア(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が多重アクシデントの餌食となった。
ロッシはレースが後半に入ってからのピットストップに時間がかかって後退。ハンター-レイとアロンソはエンジントラブルでのリタイアを喫した。
ゴールまでの最終スティント、トップ争いはマックス・チルトン(チップ・ガナッシ)、エド・ジョーンズ(デイル・コイン・レーシング)、琢磨、カストロネベスの4人に絞り込まれた。
チルトンは参戦3年目、ジョーンズはルーキー。勝負が琢磨vsカストロネベスになるものと見られ、実際にもそうなった。
インディ500で3回も優勝しているカストロネベスは、192周目に琢磨をパスし、194週目にはチルトンも抜いてトップに躍り出た。
琢磨はトップをいくチルトンを抜きあぐねていたが、カストロネベスを逃すわけにはいかない状況下で、チルトンを攻め落として2番手に浮上。その勢いで195周目にカストロネベスをオーバーテイクしてトップに立った。そして、そこからはトップを譲らず、0.2011秒の差をつけてゴールへと飛び込んだ。
2013年の14人を抜いて史上最多の15人がトップを走り、35回ものリードチェンジがあった史上稀に見るエキサイティングなレースを琢磨は制した。対するカストロネベスはこれで3回目の2位。史上最多の4勝目にあと一歩のところで届かなかった彼は、嬉しくない歴代最多タイ(2位3回)に並んでしまった。
「インディ500で勝つというのは本当に大きな意味があること。これまでにいろいろありましたが、今日勝てたことがとにかく嬉しい。もちろん、2012年に最終ラップのパスができずにアクシデントとなった経験があるからこそ、やり損ねたことを今日成し遂げた印象はあります」と琢磨は語った。
「今日はリスタートが下手だったけど、タイヤの持ちがとても良いマシンになっていた。それが勝因だと思います。そういうマシンを作り上げることをエンジニアのギャレット・マザーセッドとはずっと話をしてきました。その通りのマシンになっていました」
予選4位に続いて、優勝=決勝1位も歴代の日本人ドライバーの最上位となる。これまでの決勝のベストリザルトは2003年の高木虎之介の5位だった。
敗れたカストロネベスは、「クルーたちの素晴らしい仕事に喝采を送りたい。史上最悪の予選結果だった19位からトップまで上り詰めた。リスタートでのペナルティを受けたのに、そこからアクシデントを潜り抜け、トップを奪った」
「4勝目まであと一歩だった。全力で戦ったよ。アウトから仕掛けた最後の勝負、あれで前に出られなかった後は、もう逃げられてしまった」と語った。
世界の注目と期待を集めていたアロンソは、「ゴールできなかったのは本当に残念。トップも走ったし、多くのオーバーテイクをしたし、本当に素晴らしい経験になった。ありがとうインディカー。ありがとうインディアナポリス。そしてファンの皆さんにもありがとうと言いたい」とコメントした。