半年ぶりのF1ドライブを微塵も感じさせない走りで、初日フリー走行12番手だったジェンソン・バトン。「まだ完全にマシンポテンシャルを引き出してない」と言いつつ、「予選では十分にトップ10内に進むことは可能」という手応えを感じていたという。
しかし翌金曜日のチームミーティングで、「MGU-Hとターボチャージャーを5基目に交換するため、15番グリッド降格ペナルティが課される。レースはおそらく最下位スタートになる」ことを知らされた。
「すごく傷ついたよ。モナコでQ3に進んで、そこからポイントを獲得できたらどんなにうれしいだろう。それをすごく楽しみにしてたからね」とバトンは語る。
だがそこからのジェンソンの気持ちの切り換えは、驚くほど早かった。グリッド最後尾がほぼ確定だったら、レースに向けてニュータイヤを温存するのが定石だ。しかし、彼は現時点でのMCL32がどれだけの速さを発揮できるか、それを見極める方を選んだ。なので予選ではウルトラソフトの新品を惜しげもなく使い、Q1は11番手で通過した。
ただしこのセッション、6番手タイムを叩き出したストフェル・バンドーンにはコンマ25秒の差を付けられた。続くQ2の最初のアタックで、バトンはその差をコンマ14秒まで縮めたものの、同じタイヤセットでの2回目アタックではコンマ2秒まで離された。
この日のバンドーンは、確かに乗れている。しかし2セット目のアタックで、暫定6番手からさらに順位を上げようとしたバンドーンは、プールシケイン出口でガードレールの餌食となった。
10番手でQ3進出を果たしたバトンだが、Q2での自己ベストを更新できず9番手。クラッシュして走れなかったバンドーンを除けば、Q3勢の中では実質最下位だった。
「そう。でも9番手には、とても満足してるよ。この状況では、ベストの結果だと思うからね。モナコのような特殊なコースでは、マシンの限界を探ることは不可能なんだ。その中で、これだけの速さを引き出せた。楽しむように言われてたし、その通り十分に楽しんだよ」
そしてバトンは改めて、「これが僕の最後の予選セッションだ」と断言。改めて、「本当に楽しい予選だった」と、繰り返すのだった。