実質、予選順位とオープニングラップの攻防で順位が決まったスーパーフォーミュラ第2戦岡山決勝1。この土曜日の1デイ開催の内容からも、決勝2の勝負のポイントはまずは予選順位になることが明らかだが、決勝1の予選ではほとんどのチーム&ドライバーがワンメイクタイヤのグリップ獲得に苦しみ、翻弄された。
「今日の予選ではみんな、タイヤのグリップのピークがつかめずに苦労したはずだよ」と、アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)が会見で話すように、多くのドライバーが土曜の予選ではグリップ不足に悩まされた。
土曜予選のポールポジションを獲得した関口雄飛が2番手のロッテラーに0.6秒差を付ける一方、2番手から18番手までは1秒以内という超接戦状態。まさに関口以外のほぼすべてのドライバーがグリップ不足の症状になったわけだ。
グリップが得られなかった原因はさまざまだ。一番多いのがトラフィックの影響。1周の距離が短い岡山で、最後の同じタイミングで19台がほぼ同時にアタックに向かい、アタック前のウォームアップランを自分のペースでできなかっため、タイヤをきちんと温めきれなかったというのがグリップが足りなかった要素のひとつ。実際、関口は予選1の最後のアタックを真っ先に行い、トラフィックと無縁だったことがポール獲得の要因のひとつなのは間違いない。
ただ、その中でもトラフィックの影響を受けなかったにもかかわらず、優勝候補だったP.MU / CERUMO · INGINGの国本雄資、石浦宏明は予選1回目のアタックのタイムを更新できないなど、この岡山では不思議としか言えない現象が起きている。
「鈴鹿で勝ったセットアップをベースにしているのに、ここまでセットアップでハマるとは思わなかった」と話すのは、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)の小枝正樹エンジニア。
小枝エンジニアの言葉にあるように、開幕戦の鈴鹿ではタイヤのおいしいグリップは1周しかなく、2周連続アタックに入っても、2周目には0.3~0.4秒のグリップダウンが起きてしまい「予選のチャンスは1周のみ」というのが今年のタイヤの共通理解だと思われていた。
しかし、この岡山では決勝のファステストタイムがファイナルラップ(フェリックス・ロゼンクビスト/SUNOCO TEAM LEMANS)にマークされるように、とにかくタイヤがタレない。
「ピークがない」、「表面がサラッとしてグリップしない」、「単純に堅い」と、ドライバーはさまざまな言葉で岡山でのタイヤ特性を表現する。前回の鈴鹿ではまったく問題にならなかったのに、なぜか。
その理由として、ドライバー&エンジニアのコメントをまとめると以下のような項目になる。
・シーズン前のテストが鈴鹿と富士のみで、開幕戦ではテスト済みだったから
・岡山サーキットの路面が再舗装されて、今年のスーパーフォーミュラ用のタイヤでは初めての走行となったから
・中高速コーナーの鈴鹿はタイヤへの入力が大きく、低速の多い岡山はタイヤへの荷重が掛かりづらいから
・昨年から今年にかけてコンパウンドは同じながら、構造が変わった今年のヨコハマタイヤの特性をつかみきれていないから
・予選では自分のペースで温められれば解決していた
・自分のペースで温められても、ウォームアップをもう1周増やしても解決できる問題じゃない
・内圧の設定を間違った
・足回りのセットアップが柔らかすぎた
・ロールセンターを変えないといけないが、この2レース制で練習走行時間が少ない中では試せない
・セットアップのベースが関口車だけが正解だということ
……etc.
要するに、ほとんどのドライバー&チームが今年の2年目のヨコハマタイヤに翻弄されているのだ。
横浜ゴムでスーパーフォーミュラのタイヤ開発責任者である秋山一郎エンジニアによると、「まだまだ内圧の設定もチーム間の差も大きく、フロントとリヤでもいろいろなパターンを試されています。2年目のタイヤの特性をまだつかめていないというだけで、時間が経てばまた、みなさん同じようなところに行き着くのではないでしょうか」と、新しいタイヤ投入時の初期症状であることを示唆する。
とは言っても、翻弄されたまま翌日に予選と決勝を挑むチーム側としては頭を抱えたまま。
「一昨年、ブリヂストンからヨコハマにタイヤが代わった時以上に、去年の1年目から今年の2年目にかけての方がタイヤの変化が大きい」と話すドライバー&エンジニアもいるほどだ。
その中で、果たして本当に関口ひとりだけが2年目のヨコハマタイヤの特性をつかみきったのか。日曜の予選Q1そしてQ2がその事実を証明する場となる。